ニッケイ新聞 2013年8月23日
第5回平和灯ろう流しが17日午後開催され、事前に原爆の悲惨さを学んだレジストロ市内の州立校小中学生ら約300人が式典に臨み、核廃絶の想いを新たにした。移民周年を記念して07年からサンパウロ州教育局が実施した「ヴィヴァ・ジャポン」が契機となり、毎年300人が参加し、今年で計6500人もの州立校生徒が平和教育を受けて灯ろう流しを行った。
「ふるさとの街焼かれ、身よりの骨うめし焼土に、今は白い花咲く、ああ許すまじ原爆を」。小中学生を中心とする300人の大きな歌声が、夕闇のリベイラ河に響いた。生徒が自ら作った300基の灯ろうが川面を漂い、水郷に幻想的な風景を現出した。
日本語の歌唱指導をする州立学校の地区調整役のシルビア・ナバーロさん(59)は、地元州立校約10校から優秀な生徒を選抜して、このプログラムに参加させていると説明する。大半が非日系生徒ながら、冒頭の「原爆をゆるすまじ」「千羽鶴」「海を渡って百周年」などの歌を見事に日本語で合唱した。
式典に先立って同日午後2時からは、長崎の被爆体験を描いたアニメ映画『アンゼラスの鐘』がポ語字幕付きで上映され、生徒たちは食い入るように画面に見入り、時折り啜り泣きする声が漏れていた。
生徒の一人、ベアトリス・マリアさん(16)は「原爆のことを初めて知った。映画を見ながら心の底から泣いたわ。最初どうして日本語の歌なのかと疑問に思っていたけど、映画をみてこの式典の意味がはっきり分かった」と語った。
シルビアさんは「レジストロ百周年という記念すべき年に参加できた、この300人は特別に選ばれた生徒たち。平和学習を続ける意味はとても重要」と強調した。
式典では山村敏明実行委員長が開会挨拶で「68年前、何の罪もない市民が凶暴な核兵器の犠牲になった」と振り返り、広島の大西博己会長と長崎の川添博会長がそれぞれ県知事のメッセージを代読し、列席者から大きな拍手が送られた。
ジウソン・ファンチン市長は自ら書いた「世界平和宣言」の中で、「核廃絶を願う広島、長崎の想いを次世代に語りつがなければ」と強く訴えた。
コロニアの催しは日系人を対象とするものが多いが、平和灯ろう流しは最初から州立校生徒に平和教育を施す目的で始められたという特徴がある。レジストロ日伯文化協会、リベイラ河沿岸日系団体連合会、広島・長崎両県人会、被爆者協会、ニッケイウェブが主催した。