ニッケイ新聞 2013年8月31日
【既報関連】28日の下院で、実刑判決を受けて服役中のナタン・ドナドン下議(ロンドニア州選出)が罷免とならなかったことを受けて、下院で罷免投票を記名式にしようとする動きが起こっている。30日付伯字紙が報じている。
840万レアルを州議会から横流しした容疑で13年の実刑判決を受けたドナドン下議の罷免を決める投票は、罷免賛成が反対を上回ったが、欠席が108人、棄権も41人と多かったために過半数に24票及ばず、罷免にはならなかった。
この事態を問題視したエンリケ・アウヴェス下院議長(民主運動党・PMDB)は、ドナドン氏が服役中で職務遂行不可として職務を解き、アミル・ランド氏(PMDB)を補欠から昇格させることを発表、29日に就任式も行った。これに対し、ドナドン氏の弁護士のジルソン・ステファネス氏は、補充議員の昇格は違法であり、最高裁が行おうとしている同下議の給与などの支払い停止を助長するものだとして不服を申し立てた。
アウヴェス議長の行動にも見られるように、今回の投票結果に議会は焦りを感じている。アウヴェス議長や下院リーダーたちは、実刑判決を受けた議員の罷免投票を行う方式の変更を急ぐよう動き始めている。
上院はすでにアルヴァロ・ディアス上議(民主社会党・PSDB)が提出した議員罷免投票時の無記名投票廃止案を承認しており、下院の特別委員会に回されている。アウヴェス議長は「もし、アルヴァロ上議の提案通りに修正なしで可決されれば、10月までにはなんとか発効となるだろう」とし、この無記名投票の問題が解決するまで、下院では罷免審議を行わないと発言した。
また、レナン・カリェイロス上院議長(PMDB)は、ジャルバス・ヴァスコンセロ上議(PMDB)が提案した「実刑判決を受けた時点で、議会での承認なしで議員罷免と見なす」という憲法改正法案の投票を早急に行う意向だ。
一方、PSDBや社会大衆党(PPS)は、今回のドナドン氏の罷免問題についての投票結果を無効にするよう、司法当局に嘆願書を出した。アエシオ・ネーヴェスPSDB党首は「全く嘆かわしい。即刻、記名投票にすべきだ」と怒りの声明を出している。
今回の件で議員たちが慌てている背景には、6月に全国規模で行われたデモがある。政治改革は医療や教育の改善と並ぶデモの主要テーマだ。政治改革の中でも、「議会での無記名投票廃止」は、ジウマ大統領が掲げた「国民投票」の質問案の中にも盛り込まれた事項でもあった。
メンサロン事件を暴露したことで知られ、2005年9月に下議を罷免されたロベルト・ジェフェルソン元ブラジル労働党(PTB)党首は、「この件で9月7日の独立記念日にデモが起こるだろう」と語っている。