ニッケイ新聞 2013年8月31日
BC3世紀頃に砂漠の中に誕生したパルミラ(椰子の意味)は、都市国家として繁栄し、ゼノビア女王の活躍もよく知られ、壮大な神殿や建物を築き栄華を誇ったが、こうした文化の粋もローマによって破壊されてしまった。こんなシリアも、今—アメリカと仏から軍事攻撃される危機が迫っており、あるいはこの2、3日のうちにもミサイルが打ち込まれる公算が強い▼この国は社会主義を標榜し、旧ソ連とも近く、現在もロシアや中国とも友好関係が深い。だが、シリアの国内情勢は政府と反体制派が反発し、米英や国連も「内戦」と見ている。国内の政治も、1970年の革命のときからアサド大統領の独裁体制が続き、反対派を弾圧し、1982年のハマー虐殺では10万人を殺害したとされる。今の大統領は、アサド氏の次男である▼アサド氏は、大統領就任は40歳以上の憲法規定を改正し、自分の年齢である34歳とする無茶もやり、実権を握ったのだけれども、この強権ぶりを反体制派が黙って見送るわけもない。このため各地で騒乱が起こり、国連の「内乱」となったのだが、アサド政権の強攻策は維持され先月は化学兵器を使い、1300人が死亡したとされ、国連や米仏もこの事実を認めている▼云うまでもなく、化学兵器の使用は国連の規定でも「禁止」されている。こんな緊迫が進むにつれて隣国のイスラエルでは、米攻撃が始まれば、シリアが報復として米と同盟するイスラエルに化学兵器を使用するだろうと、政府は全国民にガスマスクの無料配布を進めているの報道もあり、危機は迫ったの認識を更に強くしたい。(遯)