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ユニリーバ=アイス売り込みに本腰=最近の販売量減少を受け=購買力低下や習慣の違い壁に

ニッケイ新聞 2013年9月3日

 オランダとイギリスに本拠を置く多国籍企業ユニリーバ(Unilever)が、ブラジル国内でのアイスクリーム売り込みに本腰を入れる事を明らかにした。
 ユニリーバといわれてもピンとこなくても、キボン(Kibon)といえば「納得!」という顔をするほどアイスクリーム業界に定着した同社。食後のデザートは手作りのお菓子が定番のブラジルで、アイスクリームを嗜好品の上位に押し上げたのは同社といっても過言ではないだろう。
 ところが、2010年から12年の売上が、29億2100万レアルから32億1600万レアルにと10%伸びたはずの業界が、販売量の減少という壁にぶつかっている。2011年は前年比0・3%の落ち込みだったが、12年は2・6%減。今年上半期の販売量は7・2%落ち込んだ。
 当然ながら上半期の収益も0・5%減の18億3千万レアルとなっており、同社では売上回復のために4千万レアル(約16億7364万円)を投ずる事を決めた。
 Kibonは、家庭用の2リットル入りタイプから、レセイタス・カゼイラスと呼ばれる高級感のあるタイプ、バー付きアイスなど、様々なタイプのアイスを販売。近年は、2リットル入り商品も中身にあわせて容器の色を変えるなどして、消費拡大を図っていた。
 だが、11年後半から始まった経済活動の減速化で、やや値段の張る商品に手を伸ばす事をためらう消費者が増え始め、より安い商品を探す傾向が定着してきた。
 さらに輪をかけているのが、インフレやドル高で所得が目減りし、消費者の購買力が低下してきている事。平均所得が先進国ほどではない事もあり、国民1人当たりのアイスクリームの年間消費量は、米国の17・9リットルと比べると約6分の1の3・1リットルに過ぎない。
 メーカー側はいつでもどこでもアイスクリームという状態を作り出したいところだが、アイスクリームはビスケットのようにカバンに入れて出るわけに行かない。また、日曜日の昼食後のデザートには手作りのケーキやプリンが定番のブラジル人に、アイスクリームといわせるのにはまだまだ時間がかかりそうだ。
 ユニリーバ傘下のアイスクリームは、シェア17・8%のKibonと4・4%のCornettoの2種類で、新製品の売り出しも始まる今月から、テレビでのキャンペーンを活発に行うと共に全国のスーパーにコンサルタントを兼ねた店頭販売員を置くという販売戦略を展開。Kibon副社長のジョアン・カンポス氏は「何とかしてアイスクリームを消費する機会を増やす事が目標」と語っている。
 購買力低下や体重増加を気にする人も増えている中、習慣の違いを超えた売り込みは大変だが、現在のシェア1位を誇る同社が、上級階級では今も成長し続けているアイスクリーム市場をどうやって庶民のものとさせるかも見ものだ。(2日付エスタード・デ・サンパウロ紙より)