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ざっくばらんに行こう!=ニッケイ新聞合併15周年記念座談会=(6)=経済政治の解説を増やせ

ニッケイ新聞 2013年9月5日

田中敬吾さん(パウリスタ新聞元社会部長)

田中敬吾さん(パウリスタ新聞元社会部長)

■田中敬吾(たなか・けいご)=1931年1月、東京都新宿区生まれ。静岡県警勤めを経て、法務省試験を受けて刑務所看守になり、巣鴨刑務所3年近くいた。1964年に33歳で渡伯し、66年から藤田普一郎編集長時代のパ紙に入社、最初はカメラマン、後に社会部長。1981年にサ紙へ移り、社会部長になり2010年に退職。


深沢=今のニッケイ新聞の内容について、色々と足りない点があると思うのでその辺り忌憚なく。
若松=政治問題なら、新聞記事を訳してあるだけではなくて、生の声がはいった解説が欲しい。例えば、与党の代議士に友達がいて、野党にも友達がいて、あっちはこう言っている、こっちはこう言っている、実際はこう動いているっていうような話を体系化して、知らせてくれるといいね。経済問題だってそうで、工業連盟とか商業連盟に知っている人がいる、大きな企業に知り合いがいる、そんなところからいつも情報を取れる状態の記者が一人、二人いたらいいね。
深沢=本当にそうですね。それが出来たら一番いいですよね。
若松=そんなこと言ったって大変かもしれないけど。今、日本からの進出企業がジャンジャン増えているみたいで、第三次の進出ブームになっている。私は第二次の進出の時に独立して、大きな仕事を色々したわけだけど、今は第三の進出が来ている。でも、ブラジル経済はちょっと下火になっていて、これで「もう一度政治危機が来たら大変だよ」って今一番心配されている。だから、ジウマは人気がなくなっている。「これどうなるの」というのが問題で、多くの知識を持っている人ほど経済問題よりも政治問題に関心があるけど、分からないわけですよ。
深沢=なるほど。その辺の解説記事というか。
若松=ええ、そういうものをね、感知する記者が一人いると、今の進出企業の連中も新聞を大事にしてくれる。そうやって進出企業との付き合いが多くなれば広告も入ってくるよ。そう考えるとね、翻訳するっていうのじゃなくて実際にね、何が起こっているのかっていうことを察知する記者を育てれば、まだまだ良いと思うのですよ。
深沢=なるほど。
若松=それともう一つは、コロニアに対する新聞の「掲示板」機能を大事にすること。コロニアの人が一番知りたいのは、どこで何をやっているのかっていうことですよ。やりたい人がたくさんいるでしょ。何ていうか、今のコロニアは文化の最盛期っていうか、〃蝋燭の最後の火〃のような状態ね。
深沢=「風前の灯火」という意味ですか。
若松=そう!(笑) あれもやる、これもやる、書道はある、絵はある、花はある何もあるという状態。みな一生懸命色んなことをやりたがっていますからね。早く言えば「掲示板」機能というか、どこで何をやるか、何日に何がありますっていうことだけじゃなくて、こんな内容をやるよというニュースを前もって知らせる掲示板の役割だね。
深沢=もっと、コロニアの回覧板としての役割を充実させるということですか。
若松=そうすると、それ見て「あ、こんなことある。行ってみよう」となる。そしてイベントの主宰者から広告代をとることだね。
深沢=あー、そうできるといいですよね。
若松=記者だからといって遠慮しないで、頼みに来たら「じゃあ、悪いけど新聞も大変なんだから小さい広告入れてくれ」と。そこまで突っ込んでいった方がいい。
深沢=たしかに、邦字紙も生き残ってナンボですからね。
若松=「広告は営業だから、記者は関係ないよ」というのではなくて、全体的にそういう気分にしていったらどうかなと思うね。早々と〃逃げ出した奴〃がこんなこと言うもんじゃないかもしれないけどな(笑) (つづく)