ニッケイ新聞 2013年9月6日
【既報関連】ジウマ大統領と補佐官や側近とのやり取り、電話や電子メールの内容等が全て米国の諜報活動の標的となっていたことをグローボ局のテレビ番組が報じて問題となった後、大統領が10月に予定されている訪米に向けた調整を行う準備団の派遣を見送った。5日付エスタード紙、G1サイトなどが報じた。大統領は5、6両日、ロシアのサンクトペテルブルクで開かれている20カ国・地域首脳会議(G20)に出席中だが、米国のオバマ大統領からこの件で個人的に説明を受ける見込みと5日付フォーリャ紙電子版が報じている。
この準備団の派遣見送りは、訪問そのものの延期あるいは中止を意味するわけではない。訪問予定の10月23日までにはまだ時間があるため、日程が再び調整される可能性もあるが、言うまでもなくブラジル政府による米国への〃不信感〃の表明に他ならない。
7日に出発予定だった準備団は大統領の宿泊、交通手配のほか、オバマ大統領との会談、調印予定の協定文の調整など、トップ会談に向けた地ならしを行うはずだった。
「不快」「落胆させる」。カルドーゾ法相らはこの件に関する協議のため、ミッションを組んで米国へ飛んだが、米国側からは否定する発言しか得られなかったことなどに関し、政府が使ったのは前述のような形容詞だ。
フィゲイレド外相は2日、今週末までにこの件に関する正式な書面での説明をするよう米国に求めたが、フォーリャ紙によれば4日の時点では同国からの返事はない。4日付G1サイトは「大統領は〃憤り〃を感じ、米国から正式な謝罪の言葉がない限り、訪問のキャンセル、両国の貿易関係縮小の可能性もある」と報じている。
ロイター通信が関係筋から得た情報によれば、大統領はこれまでに得られた米国からの回答では不十分だと考えており、米国産ボーイング機の購入見合わせなどを含む〃報復措置〃を検討しているという。
「(二国関係の)大きな危機」。匿名で取材に応じた関係者はそう警告し、「正式な謝罪があってしかるべき。それがない限り、大統領の米国訪問はありえない」と話した。さらには2010年、イラン核開発に関しルーラ元大統領が同意の立場を取ったために米国から反発を買ったことを引き合いに出し、「あのときよりも状況は悪い。大統領は完全に怒っている」と明かしている。
諜報活動が明るみに出てから、外務省に2度呼び出され説明を求められたトーマス・シャノン駐伯大使は、この両国間の危機の最中に3年の任務を終える。退任して7日に米国入りし、その後トルコへ赴任予定だ。後任には女性駐伯大使としては2人目のリリアーナ・アヤルデ氏が就任する。