ニッケイ新聞 2013年9月6日
岸田文雄外務大臣は2日にブラジリア入りし、ルイス・アルベルト・フィゲイレド大臣と会談を行った。両国間の外交、公用査証について相互に免除することで合意に達したほか、ブラジル沖の海底油田に関連した造船分野、深海共同調査、原子力開発などの科学技術分野での協力が確認された。4日夜にはブラジル日本移民史料館を視察、ジウマ大統領の訪日について「近日中に実現しようと合意した」と本紙の取材に答えた。
2日付共同通信の記事によれば、岸田外相からの日本製の医薬品や医療機器の販売拡大に向け、ブラジル側の承認手続き迅速化を検討する政府間協議の創設が提案された。フィゲイレド大臣は「日系企業がさらに進出しブラジルの発展に貢献してほしい」と要請した。相手国で罪を犯した受刑者を、それぞれの母国で服役できるようにする受刑者移送条約の締結も決まった。
岸田外相は、本紙の取材に対し、観光用査証などのさらなる緩和について「(W杯などの)大きなイベントを控えているだけに、非常に大きな課題。両国の様々な状況、課題について総合的に考えた上で判断していかなければならない。私自身具体的に前進させたいと思う」と前向きな姿勢を見せた。
日系社会については「苦労を重ねる中で『信頼できる日本人』という評価を勝ち取られた。ブラジル社会の中で優秀な人材を数多く輩出している」との印象を語り、「今年から再開した『外務省指導者研修』(本紙3月21日付既報)などを通してしっかりとしたネットワーク作りを推し進めたい」との考えを示した。
4日午前には、イビラプエラ公園内先没者慰霊碑の参拝、日本館の視察を行ったほか、史料館の視察、日系団体代表らとの意見交換懇談会に出席した。
その後文協ビル貴賓室で開かれた歓迎会では、「6世代にも渡り、文化の継承などの問題も抱えるようになったブラジル日系社会のブラジル社会に置ける位置づけ、役割は変化の過程にある。新たな世代とも力を合わせて、日伯の友好関係を強化していくことが不可欠」と力強く話し、訪れた180人の来場者から大きな拍手が送られた。