ニッケイ新聞 2013年9月10日
サンパウロ日伯援護協会が、今年7月1日以降に入会した新会員に対し診療割引制度を廃止した件(7日付け本紙で詳報)で、再検討の結果、現行の制度を維持すると発表した。
従来から他の一般病院より1割〜5割程度安い料金を設定し、さらに会員には割引制度を適用してきた。しかし7月、法的な問題を理由に新会員への割引を廃止、旧会員に対する割引も減額したことで、普段から病院を利用している一部の会員から不満の声が上がっていた。
こうした状況に対し菊地義治会長は、邦字紙に対し先月20日に行った説明会で「援協も大きくなって政府の監督が年々厳しくなっている。心苦しいが、法令にそった運営方法をとらざるを得ない」と理解を求めた。
定款には従来から法令に則り、「(役員や会員は)いかなる名目といえども、報酬や特典は受けとらないものとする」と明言されている。そのため、本来割引制度は定款違反だが、「日系社会に恩恵を与えるのが当然」と続けられてきた。
ところが近年、政府は免税対象となる公益団体の認可数を大幅に削減しており、いずれは現在の認可数約2万件を5〜6千件まで落とす方針だという。つまり、それだけ認可は狭き門となりつつある。経営状態の良好な援協も「認可がなければ一気に赤字に転落」してしまうため、サンミゲル・アルカンジョ病院(SUS)を開設するなどして政府へのメリットを提示し、認可の死守に努めている状況だ。
「料金を一本化したかった」が本音だが、「既得権益をいきなりなくすのは問題」との意見もあり、旧会員への割引制度は維持された。しかし将来的には、会員・非会員を問わず統一料金が適用されるという。坂和三郎副会長は「皆さんが使いやすい料金を、これからも定期的に検討していく」との方針を示した。
なお、医療費が払えない経済的困窮者には、福祉部が相談窓口となり、実情にあわせた医療費の軽減措置をとるなど最大限の援助を行うという。