ニッケイ新聞 2013年9月13日
消費減退などで在庫増に悩む商工業界が、資金繰りのために安売り戦略展開と10日付エスタード紙が報じた。12日付フォーリャ紙には景気刺激のための減税措置が導入された部門の解雇が雇用創出の足を引っ張っているとの記事があり、景気回復には今しばらく時間がかかりそうだ。
2012年後半から目立ち始めた工業界の在庫増は年末商戦などで小康状態となった。しかし、4月以降の消費の拡大を見越して生産を増やした分が、消費の伸び悩みなどで再び在庫増を招き、商業界共々、在庫削減を図る必要が生じている。
商業界の安売り戦略は「創業記念日」を謳っている大型小売店などでおなじみだが、今年の商業界の安売りは7月以降の消費の落ち込みをカバーする意味合いが大きい。
2008年に勃発した国際的な金融危機は堅調な国内消費によって早々に切り抜けたブラジルだが、長引く欧州経済危機の影響などで、2011年後半からは景気が減速。同年以降の国内総生産(GDP)は2・7%、0・9%の伸びに止まった。
欧米諸国では景気が回復し始めたとされるが、ブラジルの景気は予想以上に回復が遅れ、消費者の先行き不安や負債の増加が国内消費の縮小や減退も招いている。国内消費の減退は、商店の売上の伸び悩み、発注減少といった形で工業生産にもマイナスの影響を及ぼし、商業、工業の両分野の在庫増を招いた。在庫増が目立つのは、電子電気製品や自動車などの耐久消費財で、車の在庫は7月が35日分、8月は36日分と報告されている。
在庫増は資金の回収を遅らせ、管理費の増大も招く。金利引き上げ後は融資確保や返済も困難となるなど、負の連鎖は広がる一方だ。そこで何とかして在庫を減らしたい商店や工場がとった手段が安売り戦略。小売店では60%に及ぶ値下げを行い、車のローンも60回払いが認められた。
在庫増などで資金繰りが苦しくなれば起きるのが残業の減少や解雇で、工業界の7月の残業は前月比0・3%減。残業減少は3カ月連続で起き、今年の累計では1・5%減少した。残業減少後は集団休暇や解雇に及ぶ可能性が強いが、工業界全体の7月までの12カ月間の雇用創出は1・1%減となっており、煙草や食品、化学といった業界以外は軒並み雇用が減少している。政府の景気刺激策で雇用確保を条件に減税が行われた服飾、木材、靴や革製品などの業界では5〜6・7%の雇用減が起きているのも気がかりだ。雇用減は、労働市場が買い手市場となり、所得の伸びも小さくなる事を意味するため、消費の回復は更に遅れる可能性も強い。
連邦政府は、景気回復が思わしくない時の基礎的収支(歳入引く歳出)黒字目標をGDPの2・3%から2%に引き下げる事を示唆し始めたが、道路や港湾の入札などによる特別収入がなければこの数字さえ達成困難となる可能性ありという。