ニッケイ新聞 2013年9月14日
旅行ガイドブックの『地球の歩き方』のサンパウロ市のページで紹介されている「ラザール・セガール美術館」。サンタクルス駅から徒歩で行け、こじんまりしているものの落ち着いた雰囲気の魅力的な美術館だ。
名前になっているラザール・セガール(1891—1957)は、20世紀の代表的なリトアニア生まれのユダヤ人画家。主に戦争の残虐さを描き、それで人間が経験した苦しみを表現した作品で有名だ。国内の主要な芸術家や知識人から賞賛され、1920年代から発展し始めたブラジルの近代主義に影響を与えたことでも知られる。
サンパウロ市のビラ・マリアーナ区に暮らしたセガールは1957年に自宅のアトリエで死去。その10年後の67年に、現在のような美術館となった。
14歳で絵の勉強のために故郷からドイツのベルリン、その後ドレスデンへと移った。ブラジルに来たのは1912年末、22歳のとき。当地に住んでいた長姉を頼り、8カ月の滞在予定だったが、芸術愛好家で影響力のあった上院議員ジョゼ・デ・フレイタス・ヴァーレに才能を見出され、国内では初の近代美術の展覧会としての個展が開かれた。
個展では油絵やパステル画、オリジナル作品を含め、ドイツやオランダの近代美術に影響を受けた作品52点が展示された。当時は当然無名だったセガールだが、批評家からは好意的に受け止められ、引き続きカンピーナスでも個展を開催。地元紙は〃魂の画家〃と絶賛するなど、成功を収めた。
その後、予定通りドレスデンへと戻ったセガールだったが、ブラジルで見た鮮烈な色や風景が頭から離れなかった。(つづく)