ニッケイ新聞 2013年9月14日
9月13日から、13〜15日、19〜22日で通算5回目を迎える今年のロック・イン・リオだが、45万枚のチケットを売り切ったという今年の顔ぶれを見ていこう。
13日の大トリは、抜群の歌唱力を誇り、美貌やファッション性でも全世界の女性の憧れとなっているビヨンセ。14日は、2000年代に台頭したロック・バンドの中で現在世界屈指の人気を誇るイギリスのMUSE(ミューズ)。そして15日は、10数年前にアイドル・シンガーとして注目を浴びた後、どんな歌でも対応できる器用な歌唱力と俳優としても活躍できる演技力で総合エンターテイナーとして注目を集めるジャスティン・ティンバーレイクが務める。
週が明けて木曜日の19日の大トリは80年代以降、アメリカのへヴィ・メタル界の王者メタリカ、20日は親しみやすい歌と風貌で30年衰えない人気を誇るボン・ジョヴィ、21日は70年代からアメリカの労働者にとっての英雄と目されている社会派ロッカー、ブルース・スプリングスティーン、最終日22日は世界一のへヴィ・メタル・キングと称されるアイアン・メイデンが登場する。
この傾向は前回11年のときから顕著だったが、中心となるロック・バンドが40〜60代と高齢で、若手はダンス系のポップス歌手が目立っている。このためロック・ファンからは「ロックの現状を表していない」と批判されることも少なくない。
これは「ロック・イン・リオ」がロック、ならびに音楽のスターに求めている信条の問題とも言われている。同フェスティバルがはじめて話題となった80年代、ロックスターは巨額の富を謳歌する映画スター並の存在で、芸能記者の密着度も非常に高い存在だった。それゆえ、その言動が広範な影響力を持っていた。
だが90年代に入り、アメリカやヨーロッパでロックの原点回帰的な動きが活発化した。「ロックとは、もっと身近なことへの不満や怒りを表すものであり、自分の社会的地位を誇示するものではない」とする傾向が強まったのだ。このため、バンドはスターになるよりも、より芸術家的気風を好みだした。
ロックがそういう立場を取り始めてから20年ほど経つが、ロック・イン・リオは「スター」性を強く求め、熱心なロック・ファンの希望より、一般に通りの良いアーティストの名前を好んでいると言える。普段、サンパウロやポルト・アレグレといった都市よりロック・コンサートの動員力が落ちると言われるリオでこれだけの人数が動員できる背景にはこうした理由もある。
逆にサンパウロで毎年開催されている「ロラパルーザ」や「プラネタ・テハ」といったフェスティバルは、今現在の世界のロックの流れや傾向にきわめて忠実に構成され、若いロック・ファンを中心に支持を受けている。
ロック・フェスティバルのこうした傾向の違いの中にもブラジルの各都市の性格の違いが見て取れるのは興味深い。