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ブラジル政治の基礎歴史=(10)=ジウマ大統領の高い人気に陰り=国民から〃抗議の波〃勃発

ニッケイ新聞 2013年9月14日

 ルーラ政権の高い人気を乗り移らせる形で、労働者党(PT)は後継者のジウマ氏を大統領に就任させることに成功した。ブラジル初の女性大統領という事実に加え、軍政時代は反体制の闘士だったという経歴も国際的に注目され、2011年の就任当時から高い人気をもって迎えられた。
 ジウマ大統領は不正を嫌う性格で、物言いもはっきりしていることから好感度も高く、支持率調査でも常に70%以上という高い数字をしばらく保持していた。
 だが、その人気とは裏腹に、ルーラ政権時に絶好調だった経済成長は壁にぶち当たりはじめていた。ヨーロッパ経済の停滞の影響はブラジルにも及びはじめ、国内総生産(GDP)の成長は11年に2・8%、12年には0・9%にとどまった。低成長に加え、13年にはドル高レアル安、インフレも襲った。
 4月に高騰したインフレに強い危機感を覚えた国民は6月、サッカーのコンフェデレーションズ杯の機会に怒りとなって爆発した。インフレで中流生活層の生活が圧迫されはじめているにもかかわらず、大量の税金をつぎ込んで国際レベルの施設を続々と作って14年W杯を実施することに、新興の中産階級を中心とする国民層は強い違和感を覚えた。
 そんな目立つイベントに投資する以前に、もっと政治家の汚職を減らし、交通インフラの充実、国民医療の改良発展、治安の改善などの項目に、政府は投資をすべきだという抗議行動が全波に広がった。
 こうした鬱積した苛立ちが爆発した結果、6月中旬、ブラジルでは全国規模で「抗議の波=マニフェスタソン」と呼ばれるデモが起こった。中東の国内動乱とは全く性質が異なるものだったが、多くの諸外国では同列に報じられ、国際的にも注目された。
 これにより、政権獲得から10年を超えていたPT政権の支持も急落。高い人気を誇っていたジウマ大統領も油断できない状況となっている。
 14年の大統領選に向けての動きも活発化しはじめている。10年大統領選で小政党・緑の党(PV)での立候補ながら3位に入った、かつてのPT党員でルーラ政権時に環境相もつとめたマリーナ・シウヴァ氏は、新政党・持続ネットワーク(RS)を結党し準備に入っている。
 また、PTと5期に渡って大統領選で際どい争いをしているブラジル民主社会党(PSDB)は、タンクレード・ネーヴェス氏の孫で、元ミナス・ジェライス州知事のアエシオ・ネーヴェス氏を立てて政権奪回を狙っている。また、躍進著しいブラジル社会党(PSB)党首のペルナンブーコ州知事、エドゥアルド・カンポス氏も虎視眈々とその座を狙っている。