ニッケイ新聞 2013年9月14日
ブラジル・バイク製造者協会(Abraciclo)によると、2007年から12年にかけてのスクーターの販売台数が、3280台から29566台に801・4%も伸びているという。
小回りがきき加速が強いなどは通常のバイクと同じだが、スクーターの強みはバイクにはない心地良さ。オートマチックで運転が楽、足を休める事が出来る、風圧を余り受けない、座席の下に物を入れられるなど、通常のバイクにはない利点にひかれて、乗用車や公共交通機関の利用を止めて乗り換える人も多い。
サンパウロ市に住むアナ・パウラ・ホフマンさんは、地下鉄を使うのを止めてスクーターに乗り換えた一人で、毎日1時間かけて通っていた道のりもスクーターなら20分。通勤時間が3分の1に短縮された上、毎週の費用も15レアル程度で地下鉄(5日間で30レアル)のほぼ半額だ。
「もう絶対に手放せない! これまでは平日は何も出来なかったけど、今は時間の余裕が出来たから勉強も出来るし、スポーツのジムにも通っているの」と言うアナ・パウラさん。スクーターを選んだ理由はカバンなどを入れる場所があり、運転が簡単な事で、「車と取り替える気なんて毛頭ない」と明言する。
ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテに住む学生のリジア・マリア・デ・オリヴェイラさんも、初めて買った乗り物がスクーター。渋滞に巻き込まれるのが嫌で、最初から車購入は度外視したという。
景気減速で11年、12年の販売台数は前年比3・7%と5・3%の落ち込みを経験したが、これは2010年の販売台数が3万2405台と記録的だったため。12年のバイクは前年比20・9%減だった事に比べれば意気盛んだ。
5年間で急増したとはいえ、スクーターの販売数は年平均3万台で、2012年の自動二輪の販売総数160万台に占める割合は1・8%。シェア1位のホンダも販売機種は2機種のみで、13機種を揃えるイタリアには遠く及ばない。もっとも、イタリアは自動二輪の71・3%がスクーターで、経済危機の中といわれた12年も年14万7119台を売り上げているから、凌駕するのは夢の夢か。(13日付グローボ局サイトより)