ニッケイ新聞 2013年9月17日
1〜8月のバス利用は昨年同期より1700万回減少という記事がエスタード紙に出た16日、サンパウロ市は公共交通機関の利用を増やして渋滞を改善する目的でバス専用レーンの拡張を行った▼連邦政府が減税などの自家用車製造販売を優遇する政策を続けるからこそ、バス利用が減った。その結果、自動車が増えて渋滞が酷くなりすぎたため、サンパウロ市側では自家用車の利用を減らそうと、バス交通を容易にするために専用レーンを拡張した。つまり、連邦と市の方針がちぐはぐになっている▼「多くの雇用や投資を生む車産業は基幹産業だ」ともてはやしておきながら、「専用レーンを拡大するから車は家に置いておけ」というのは矛盾している▼地球温暖化防止のために温室効果ガスの排出を削減といいながらも、車の増産が喜ばれ、販売を促すための減税を行うのも不思議だ。もっと一貫性のある政策、全体を見て調整する人間はいないのかと考え込んでしまった。と同時に「こんなに渋滞が酷いのに、まだ車の生産や販売を奨励するのか」と連邦政府の政策を批判した知人の言葉も蘇った▼2002年12月から今年8月までの10年余りでバス料金は111%、地下鉄料金は93・9%値上がりしたが、新車価格は6・3%の上昇。ガソリンや車両保険も43・9%、40・5%上がったのみで、中古車価格は19・1%値下がり。公共交通機関の充実よりも車優遇の政策が採られてきた事は一目瞭然だ▼バス料金の値上げ反対などを発端とする6月の抗議行動後、国も公共機関の充実などの公約を打ち出したが、その場逃れで付焼刃的な政策はいつかボロが出て来る。(み)