ニッケイ新聞 2013年9月19日
連邦直轄区(DF)の裁判所で働くマリレニ・ロペスさんの人生は、2001年に新聞の表紙に掲載されていた「裁判所職員募集」の記事を見た事で180度変化した。
採用試験の受付が始まった事を知った時のマリレニさんは、ブラジリアに程近いブラジランジアに住み、アルミ缶を拾い集める再生資源ゴミ回収業者〃カタドール〃の一人で、当時の月収は50レアル。
4人の子供を抱え、集めてきた板などで作った小屋に住んでいたマリレニさんは、ガスを買うお金もなく、その辺で拾ってきた小枝などを燃やして調理するという生活をしていた。果物は贅沢品で、手持ちの下着は1枚きり。シャワーを浴びる時に洗っては干し、下着も着けずに寝た翌日はまた同じ物を着て出かけるという毎日だった。
そんな彼女の転機となったのが01年に見た新聞広告だ。口唇口蓋裂(みつ口)の手術を受けて安静を命じられていた25日間、実家に戻って公務員採用試験用の手引書を持っていた妹達と共に猛勉強。試験の3日前に5人目を出産し、医者が止めたがあえて受験。妹達は不合格だったが、マリレニさんは裁判所職員の採用試験に一発で合格した。
以前は家庭訪問をして回る医療グループに入っていた事もあるマリレニさんだが、子供が病気になったりするたびに欠勤したために解雇された。子供を預けた保育所は足が汚れていると中には入れてくれないため、乳母車をあつらえて保育所まで連れて行き、その帰りにアルミ缶を集めるという生活は1年半続いていたという。
「本当に大変だったのよ。貧しくて、ひもじくて」というマリレニさんは今、月給7千レアルを得、生活が一変。子供達は、アルミ缶を集める生活をしていた事を恥じるどころか、母の苦労と努力を誇りに思っている。共に働く職員や上司も、マリレニさんを賞賛。5人の子供達を大学に進ませたいと願いながら忙しく過ごす毎日だが、あの頃の暮らしが今の自分を支えていると胸を張る。(17日付グローボ局サイトより)