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ジウマ大統領の訪米延期=経済への影響は限定的か=野党側は選挙戦略と批判

ニッケイ新聞 2013年9月19日

 ジウマ大統領が17日、10月23日に予定されていた米国訪問延期を発表した。一部報道機関は中止と報じたが、厳密には〃先延べ〃を意味する言葉が使われ、来年以降の訪米を示唆している。経済などの影響は限定的と見られているが、野党側は14年の大統領選を睨んだマーケティングと批判していると18日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。
 訪米中止の可能性がより明確になったのは13日からだ。ジウマ大統領は同日夜、大統領官邸でルーラ前大統領と会談。前大統領は以前から今は訪米する状況ではないと助言していたが、オバマ大統領から明確な説明がなく、諜報活動が止まる様子もないならば、行くべきではないとダメ押ししたようだ。
 ジウマ大統領は同日、フランクリン・マルチンス元通信相、選挙参謀で広報業者のジョアン・サンターナ氏、ルイ・ファルコン労働者党(PT)党首とも会談。17日の訪米延期の発表前には、ルイス・アルベルト・フィゲイレド外務相とも会談の時を持った。
 訪米延期の理由は、オバマ大統領からは米国国家安全保障局(NSA)による諜報活動に関する満足のいく説明がない事と、諜報活動を止めるという約束が得られていない事とされ、米国側からも、ジウマ大統領の訪米は延期となったという報道がなされた。
 両国の文書は共に、訪米延期と別の日程を組む可能性がある事、戦略的な関係は維持する意向である事の3点を盛り込んでおり、非常に似通っており、米国がジェット戦闘機購入や国防問題に言及した事が唯一ともいえる違いだったという。
 野党側は、訪米延期の決定にはジョアン・サンターナ氏の意見も反映されており、選挙対策に諜報活動問題や訪米を利用したと批判。国益を考えたら訪米して貿易交渉などを進めるべきだったと説いている。
 これに対し、専門家達は、訪米していてもビザ撤廃問題や安全保障理事会の常任理事国入りその他の懸案事項は解決しなかったと見ており、重大な損失は皆無と分析。企業家達は国連総会前に米国入りして貿易問題などを協議中で、外務省も後押しする形の関係構築努力が続いている。そういう意味では、訪米延期で最大の被害を被ったのは戦闘機購入問題が実質的に棚上げとなったボーイング社とされている。
 その逆に、訪米延期で最も得をするのは、米国に対して毅然とした態度をとった事で国民にプラスのイメージを植え付けたジウマ大統領というのが専門家の見方だ。今後の訪米日程は支持率の動向を見て決まると見られ、支持率が高ければ14年の4月か5月、そうでなければ選挙後の15年と見られている。