ニッケイ新聞 2013年9月21日
日本からサンパウロを訪れた人たちは、大きなビルや商店街のシャッターの落書きを見て驚く。そして「どうしてこんな事が?」と語り「汚い」と一刀両断である。いや、これはリオでも同じであり、大雑把に言えばブラジルの都市ではどこでも見られる醜悪な風景である。何時頃から始まったのかは、はっきりしないが、30数年前だったように思う▼兎に角、所も場所も選ばずにスプレーを吹き付けての落書だから始末に負えない。この馬鹿げた暴挙の動機もよくは解らないが、世の中への不満や抗議と云うたわいのないことらしい。中には「芸術」だと高言するとんでもない不逞の輩までいる。そして—治安当局や警察も、多忙を極めているためだろうか?こんな若者らを取り締まることがゼロに近い▼こんな街の落書きを「ピシャソン」というが、警察の野放図な取締りに乗っかった10代の瘋癲らは、我が物顔で跋扈し街の美しさを傷つけている。しかも、15階とか20階などの高層ビルの外壁に落書すると、何処からともなく「賞金」が届くそうだから—世の常識からすれば、怒りよりも先に—何とも情けない▼我が編集局の斜向かいに小さな広場があり、そこに「砂丘に まろびて 韜晦を愉しめば 海よりそよぎて 朝は流れる 武本由夫 如空かく」の歌碑があり、散歩がてらによく見て武本さんを偲んだりするのだが、こんな世間知らず悪たれどもが、この歌碑に茶色っぽいスプレーで太い棒線を吹き付けているのは、とても許せない。この無知蒙昧の徒に厳罰を—である。(遯)