ニッケイ新聞 2013年9月26日
第68回国連総会が17日にニューヨークの国連本部で開幕し、24日からは各国元首による一般討論演説も始まっているが、トップバッターを務めたジウマ大統領の演説は米国の諜報活動への非難に集中し、米政府への強気の姿勢を改めて強調した。また、それに伴うインターネット上の情報保護の国際的な取り組みへの提案、6月に起きた〃抗議の波〃に対するブラジル政府の対応などにも触れた。25日付エスタード、フォーリャ両紙などが報じた。
ジウマ大統領は、米国家安全保障局(NSA)によって自身や側近、ペトロブラス社の通信記録などが収集されていたことへの批判や提言に、20分ある演説時間の3分の1を費やした。「人権と市民の自由の重大な侵害行為」と3度繰り返し、「国際法に違反する」と述べて、諜報活動への〃憤り〃と〃嫌悪感〃をあらわにした。
大統領は1週間前、10月に予定されていたワシントン訪問の中止を発表したが、国連総会の場でも米政府に対する抗議の意を表明。米国からの説明と謝罪、今後同じ行為を繰り返さないという保証を求める姿勢を明らかにして、「怒りは収まっていない」ことを全面に強調した。
また、「情報や通信技術の領域を、国家間の新たな戦場にすべきではない」と訴えた。ブラジル政府としては、通信を不正な傍受から守るための法規制や技術を導入する方針(Marco Civil)を示した上で、それを国家間での枠組みに広げ、インターネット上の情報を保護するための国際的な取り決めの創設を提案するとした。
また、伯政府の政策や成果にも触れ、全国で起きた6月の〃抗議の波〃の後のブラジル政府の対応については、「政府は(デモを)抑圧せず、国民の声を聞いて理解した」とアピールした。欧州諸国で高い失業率を記録するなど深刻な状況が続く世界経済については、「ここ数年、国際的な金融危機の影響があったにもかかわらず、ブラジルは経済成長を取り戻しつつある」との言葉でブラジルが世界の例外であると強調、乳幼児の死亡率が劇的に減ったことについても、「国内の貧困、飢餓、社会の不平等の撲滅に向けた政府の取り組みが功を奏した」と言及した。
この演説で攻撃の標的とされた米国のオバマ大統領は、ジウマ大統領の演説が終わる頃になって到着し、2番目に登壇。米国政府による他国への諜報活動への懸念があることを認めたものの、ブラジルの名前には触れず、「我が国や同盟国の市民の安全に関する懸念は合法的なもので、プライバシー侵害という問題とのバランスを保つような、情報収集のあり方について見直しを始めた」とのべるにとどめた。
ジウマ大統領の演説を聞いた米国政府関係者はサマンサ・パワー国連大使のみで、ケリー国務長官やライス大統領補佐官はオバマ大統領の演説の時にのみ会場に姿を見せた。また、演説の前日にジウマ大統領に連帯の意を示した亜国のクリスチーナ大統領も、演説時には会場にいなかった。