ニッケイ新聞 2013年9月28日
1〜8月の経常収支の赤字が580億ドルに達し、2012年度の年間赤字額の542億ドルを上回ったと25日付エスタード紙が報じた。
ブラジルの経常収支は2008年以降、大幅な赤字続きだが、今年は8カ月間で過去最大だった昨年の赤字額を上回り、生産部門への外国直接投資でも埋め合わせが出来ない状態となる見込みだ。
経常収支は、輸出入による貿易収支や運輸や旅行などのサービス収支、対外債務に対する利払いなどの所得収支からなるが、1〜8月の実績を基に見直された貿易黒字の年間予想額は70億ドルから20億ドルに大幅に下方修正された。1〜8月の貿易黒字は、輸出が2%の伸びだったのに対し、輸入が9%伸びた事で、昨年同期比170億ドル減少となり、経常収支全体が昨年同期比264億ドル減という中でも最大の下げ幅となった。
また、年間黒字額が20億ドルで終わった場合は昨年末の194億ドル比89・7%減となり、レアルプランが導入された1995年の133・1%減以来の大幅な落ち込みとなる。過去50年間で89・7%以上落ち込んだのは、1962年と71年、74年、78年の4回のみだという。
他方、サービス部門の中の外国旅行に関する赤字予想額は、167億ドルから172億ドルに上方修正。ブラジルのサービス収支と所得収支は恒常的に赤字で、所得向上や失業率低下などで外国旅行者が増えた事による国外での支出の伸びは、ここ最近のドル高によってやや勢いが落ちたものの、国外からの旅行者が国内で支出する額を大きく上回る。6、7月にはサッカーのコンフェデレーションズ杯やカトリックの世界ユースデーのような国際イベントがあったにも関わらず、赤字は増え続けている。
経常収支の赤字見込み額は、多国籍企業の利益送金や投資への見返り収入などで生じる所得収支の赤字が300億ドルから240億ドルに下方修正された事で、750億ドルのままとなったが、ブラジルへの信頼度の目安ともなる外国直接投資は8カ月で390億ドルで、昨年同期の432億ドルを下回ったため、年間の見込み額も650億ドルから600億ドルに下方修正。予想通りならば、外国直接投資は経常収支赤字の80%しかカバー出来ない事になる。
2000年代の半ばは貿易収支の黒字幅が大きかったために経常収支も黒字だったが、貿易収支の黒字幅が縮小し続ける一方で他部門の赤字が拡大しているのも懸念材料だ。中銀が為替市場への介入を繰り返している事もあり、8月のドル流出は32億6千ドルで外貨準備高も縮小中。年間累計ではまだ22億3800万ドルの入超だが、美国の政策次第でドル高傾向はより強まりそうだ。