ニッケイ新聞 2013年10月3日
現在104歳になるポルトガル人映画監督、マノエル・ド・オリベイラ氏(1908年〜)の展示会が、サンパウロ市のインスティトゥート・トミエ・オオタケ(Av. Faria Lima, 201)で2日から11月10日まで開かれる。入場は無料。
その名も「マノエル・ド・オリベイラ—映画の物語」。50以上の作品に登場する展示品が並び、現役最高齢の映画界の巨匠が描く、魅力的な架空の世界に誘い込む。
キュレーターのパウラ・フェルナンデスさんは、「今では世界中で評価され、カンヌやヴェネチアなど外国の映画祭では欠かせない人物となったオリベイラ監督を形作ったのはどういった要素なのか、それに注目してほしい」と勧める。
この展示会に際し、オリベイラ監督本人の代わりに娘のアデライデ・マリアさんが来伯したが、「もし旅行する余裕があれば、彼はブラジルまで来てくれていたと思う。でも次の映画のための資金集めをしているのと、年齢の関係で難しかった」とパウラさん。
処女作「ドウロ河」(1931年)で弱冠23歳の監督デビューを果たしたが、本格的に制作に取り組むようになったのは高齢者と呼ばれる年齢に差し掛かってからだ。
63歳で発表した「過去と現在 昔の恋、今の恋」は(1972年)軍政時代の真っ只中に撮られた作品で、この作品以降、写実主義的作風が薄れ、ポルトガル社会への批判を寓話的に表現する傾向が強くなった。
70歳を過ぎた80年代からは毎年のように意欲作を発表しており、100歳を超えた今でも制作意欲は衰えない。
最新作の「Conquistador Conquistado」(邦題「征服者、制服さる」、2012年)は、今月18日に始まる「第37回サンパウロ国際映画祭」の上映作品の一つだ。この作品は、オリベイラ氏を含む4人の世界の映画監督によるオムニバス映画「Centro Historico」(邦題「ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランエス歴史地区」、ポルトガル、96分)の一部。
ギマランエスはポルトガル北西部にある都市で、ポルトガル王国初代国王のアフォンソ一世が誕生した、〃ポルトガルの発祥の地〃で、歴史地区は世界遺産にも登録されている。映画はこの地区を題材に描かれており、オリベイラ監督は、現代における観光を批判的かつユーモアを交えた視点で捉えた作品に仕上げている。
「彼は偉大なユーモアのセンスの持ち主だけど、初期の作品にこの軽妙さはみられなかった」と語る同映画祭のディレクター、レナタ・デ・アルメイダさんは、「(最新作には)彼のこれまでの軌跡、時間をかけて得た知見がよく表れている」と評価している。(2日付エスタード紙より)