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新憲法公布から25年=市民も参加し出来た条文=表現の自由訴える書籍刊行

ニッケイ新聞 2013年10月5日

 「ブラジルの自由と民主主義、社会正義のための文書公布を宣言する」—。1988年10月5日、ウリセス・ギマランエス憲政議会議長がひときわ高く叫んだ言葉は、1967年制定の旧憲法との訣別と、現行憲法への移行を告げた。
 軍政時代(1964〜85)終了後の新憲法誕生には、タンクレード・ネーヴェス氏の選挙公約だった憲政議会設立と、市民も巻き込んだ幾多の論議が必要だった。新憲法制定への動きは、84年4月25日に大統領の直接選挙を行うための法案が22票の不足故に否決された時から勢いを増し、タンクレード・ネーヴェス氏急逝後に大統領に就任したジョゼ・サルネイ氏の下で具体的準備が進んだ。憲政議会設立法案承認は85年6月28日で、86年11月に憲政議会の構成員選出、87年2月1日から実際の審議が始まった。
 当初は同年中と目されていた新憲法公布は、議員間の意見の相違などで順延され、市民も交えた激しい論議は1年半続いた。1227万7423人の署名と共に上程された憲法補足令(PEC)案は122。内83は10月5日公布の新憲法に補足令として書き加えられていた。「市民憲法」への新たなPECは25年間に80加わり、現在も1532件が審議中または審議待ちだ。
 4日付アジェンシア・ブラジルによれば、新憲法の条文作りにも関わったネルソン・ジョビン元最高裁長官は、新憲法は軍政時代の影が色濃く残る中で作られ、不足している部分がある事は皆が承知していたとした上、新しいPEC上程は民主主義国家として望ましい姿と評価している。
 また、上院では3日、憲法公布25周年記念の『民主主義の建設と表現の自由〜憲政議会の前と最中、その後』(ヴラジミル・エルゾギ研究所)と題する書籍の刊行会を開催。開かれた言葉研究所のパトリシア・ブランコ氏は、同著は表現の自由を獲得した経緯について述べた本で、表現の自由に対する広範な保証は新憲法の特徴と強調。レナン・カリェイロス上院議長は「民主主義の中での報道機関の役割は代替不能な本質的なもの」と発言。報道の自由を制限するような議論は排する事も約束した。
 ブラジルでは、今も一部で報道規制が残り、ジャーナリストへの脅迫や殺害事件も後を絶たない。軍政下に拷問死したジャーナリストのヴラジミル・エルゾギ氏の息子で先の書籍を出版したVエルゾギ研究所のイヴォ・エルゾギ所長は、リオ市で起きたアマリウド・デ・ソウザ氏失踪事件は、警察が電気ショックで拷問を加えた後に窒息死させたという点で自分の父親が殺害された時と寸分違わず、権力を笠に着た拷問死という構図は今も続いているとも警告した。