ニッケイ新聞 2013年10月10日
連邦直轄区セイランジアで8日、6歳女児がスクールバスの中で溺れて死亡するという事故が起きた。強い雨が降って地下鉄の下を潜る道路には既に水が溜まっていたのに、運転手が何とか通過出来ると考えて乗り入れたところ、エンジンが止まり、急速に水が入ってきたという▼乗っていたのは5〜10歳の子供23人で、現場には消防車両5台とSAMUの救急車4台が向かい、バスの屋根に登って助けを待っていた運転手と子供達を救出したが、シートベルトをはめていたために逃げ遅れた子供数人が大量の水を飲み、ジオヴァナちゃんが死亡。9日朝も3人が入院している▼子供達の証言によると、年長者は年少者を助けようとし、他の子を助けに行くと言って泳ぎだそうとした子供もいたという。急速に水が入ってきて、気がついたら首まで水が来ていた、一緒に乗っていた友人が命を落としたという恐怖を伴う経験は、子供達の心に簡単には消せない傷も残したはずだ▼知らせを聞いた親達が半狂乱になって子供達の消息を知ろうとしたであろう事は想像に難くないが、子供達の命を預かっていた運転手の胸中にどんな思いが去来したかも気にかかる▼現場付近の水深は2メートル半にも及んだというから、市街化計画や治水・防災計画にも問題があったはずだが、行政の腰は重く、事件が起きても具体的な対策が採られないケースも少なくない。地球温暖化で豪雨や干ばつはより多くなると予想されており、天災と人災の境目はぼやける一方だ▼これからはまた水害が増える時期。運転手の判断の甘さだけが責められそうな事件だが、行政の責任は誰が問う?(み)