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ブラジルの高齢者憲章10年に=虐待などの悲劇は絶えず=被害者は1時間に5人

ニッケイ新聞 2013年10月11日

 2003年10月1日にルーラ前大統領が裁可し、同3日に官報に掲載された高齢者憲章が発効から10年を迎えたが、高齢者への暴行、暴言などの通報は1時間に付き5件に上り、その数が増えている。ブラジルも少子高齢化が進み、60歳以上の人は総人口の7・4%を占めているが、この割合は2060年には26・7%に達するともいわれている。
 10月1日は国際高齢者デーで、ルーラ前大統領による高齢者憲章の裁可もこの日にあわせて行われた。だが、10周年という言葉の裏で、高齢者達が素直に喜べない状況が続いている。
 10日朝のグローボ局の番組では、リオ市に住むマリア・ダ・グロリアさん(84)が今週、大たい骨骨折で病院に運ばれたが、診察の結果、栄養失調も起こしていた上に、この女性の世話をしていた女性弁護士がグロリアさんを軟禁状態にしていた上、グロリアさん所有の不動産2軒を自分名義に書き換えたりしていた事も判明したという衝撃的な事件を報道。
 レポーター達は、10年以上子供達が寄り付かず、家の内外も荒れた状態の夫婦や、息子が隣に住んでいながら、冷蔵庫の中には腐りきった野菜しかない一人暮らしの高齢者などの様子も報告したが、国際高齢者デーにあわせて1日に大統領府人権局(SDH)が発表したデータからも、ブラジルが高齢者にとって決して住みやすい国とはいえない事が伺われる。
 それによると、高齢者への暴行通報専用の100番通話(ディスケ100)には、今年の1〜6月に2万2754件の通報があった。これは、1日当たり125件、実に1時間に5件の通報がなされた事になる。
 高齢者への暴行は、身体的なものに限らず、悪口雑言や軟禁、食べ物やお金を与えない、身の回りの世話をしないなど、多岐にわたり、様々な苦痛を味わっている高齢者が後を絶たない。
 SDHによると、被害に遭った高齢者の64・74%は女性で、被害者の47%以上が歩行困難や弱視その他の身体的な障害を持っている。
 通報の70%以上は被害者の自宅で起きた事件で、加害者の70%は被害者と血縁関係を持っている。息子や娘による暴行が半数以上に上る事実は、関係者を驚かせた。加害者の36・21%は25〜45歳で、麻薬を買う金欲しさに、高齢者を脅したり年金などを勝手に引き出したりするケースも多いという。
 今年前半の通報件数を基にSDHが試算した高齢者虐待率(人口10万人あたりの通報数)は、リオ・グランデ・ノルテの25件が最高で、連邦直轄区の24・7件、リオ州の21・9件がそれに続く。最も少なかったのはロライマ州の3・1件だった。通報数最多はサンパウロ州の3784件で、全国の通報数の16・63%を占めた。2位のリオ州は3509件(15・42%)、3位のミナス州は1882件(8・27%)だった。
 100番通報の受付は2011年に始まり、13年は前半だけで2万2754件。この時点で、11年より65%増だった2012年の2万3523件に迫っている。(10日付グローボ局放送、1日付SDH)