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ノーベル平和賞にOPCW=各国で化学兵器禁止に貢献=シリアでの作業指揮はブラジル人

ニッケイ新聞 2013年10月12日

 ノルウェーのノーベル賞委員会が11日、2013年のノーベル平和賞は、オランダに本部を置き、世界各国で化学兵器の廃棄計画を進めている化学兵器禁止機関(OPCW、ポ語の略号はOpaq)に授賞と発表したと11日付G1、アジェンシア・ブラジル他の各サイトが報じた。
 OPCWは、1997年4月に発効した化学兵器禁止条約に基づき、同条約の執行機関として同年5月に発足。これまでに86カ国で5千件の査察を実施。職員の数は500人足らずだが、米国やロシアなどの条約加盟国が申告した化学兵器7万1196トンの内、81・1%に相当する5万7740トン分の廃棄作業に関わってきた。
 OPCWが現在抱えている最大の任務は、今年8月に化学兵器が使用され、1400人以上が死亡したとされるシリアでの化学兵器廃棄・検証作業だ。国連安全保障理事会は同件について9月27日に緊急会合を開き、シリアに化学兵器廃棄を義務付ける決議を採択しており、OPCWが10月に関連施設を査察し、2014年前半までに全廃する事になった。
 OPCWの現在の事務局長はトルコ人のアフメト・ウズムジュ氏だが、初代事務局長は、現在駐フランス大使のマウリシオ・ブスタニ氏で、2002年まで同機関の責任を負っていた。
 また、現在のOPCWの査察官達を取りまとめているのは、やはりブラジル人のマルセロ・コス氏。授賞が決まった後にグローボ局のインタビューを受けたコス氏は、シリアには既に22人の査察官が派遣されており、化学兵器関連施設の査察を進めている事や、廃棄の具体的な方法はまだ確定されていないが、一度中性化した後に廃棄という手順をとる可能性が高い事などを明らかにした。
 コス氏はまた、「ノーベル平和賞受賞は、(シリアによる化学兵器使用の告発以来)実質的な休みもなく働き続けてきた査察官達に、より真摯な姿勢で仕事を続ける力を与えてくれた」と語っている。
 ノーベル平和委員会では、化学兵器を含む武器廃棄はノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベル氏が最も懸念していた項目の一つと説明した上で、OPCWが内戦下のシリアでの化学兵器の査察と迅速な廃棄という前例のない課題に取り組んでいる事を高く評価し、平和賞受賞を決めたとしている。同国には約1千トンのサリンガスやマスタードガス、その他の化学兵器があると推定されており、OPCWへの授賞は同機関の働きを後押しし、一層の奮起を促す狙いがあると見られている。