ニッケイ新聞 2013年10月16日
10人のブラジル人作家が、世界最大の出版業界、すなわち米国の出版市場に参入する。米国の通販サイトで知られるアマゾン・ドット・コム社が、2012年から展開する国外の文学作品の英訳出版に特化した出版事業「アマゾンクロッシング」の一環だ。
2015年までに、10人のブラジル人作家の長編・短編小説の英語翻訳版を出版する計画で、電子書籍、紙の書籍、オーディオブック(書籍を朗読したものを録音した音声コンテンツ)の三つで発刊される。
プロジェクトの決定はブラジルがテーマ国だった「フランクフルト・ブックフェア」(今月9〜13日)も関連しており、10人の作家は出版エージェントや批評家の助言を経て選定された。
「国際(出版)市場の中でブラジルの存在感はかなり薄い。でもこの〃不在〃が大きな可能性でもある」。見本市でのフォーリャ紙の取材に、「アマゾンクロッシング」のガブリエラ・ページフォートさんはこう答えている。
シリーズ第一弾は、キンドル(Kindle、アマゾン・ドッドコムが開発・販売する電子書籍リーダー端末)で読める形態のもので、11月に発刊される。イヴァナ・アルーダ・レイテ、アナ・パウラ・マイア、パロマ・ヴィダルの3人の短編集だ。
テルシア・モンテネグロ、クラウジア・ラジェの短編集は14年と15年の初めに出る予定で、長編小説5作品も発刊される。見本市の開会式でスピーチして話題になったルイス・ルファットの『彼らは何匹もの馬だった』(Eles Eram Muitos Cavalos、2001年)がその一冊だ。
既に8カ国で販売されているこの作品は、国内出版大手Companhia das Letras社からも改訂版が出ており、来年後半に紙版、オーディオ、電子版で発刊される。「ルファットの名前は、私たちが相談した(出版関係者や批評家)12人のうち11人が挙げた」とガブリエラさん。
クラウジア・ラジェ、エリアーネ・ブルム、セルジオ・ロドリゲスの3人は、ブラジル文学を国外に広める目的で創刊された国会図書館による雑誌『マシャード・デ・アシス・マガジン』の第4巻に、作品の抜粋部分の翻訳が掲載された。
「僕の作品は既に何カ国語かに翻訳されているけど、英訳版の出版にはいつも超えられない壁があった」。フランクフルトでそう語っていた作家のクリストーヴァン・テッザは、自身の作品『色と影の間の短い空間』(Breve Espaco entre Cor e Sombra)の出版に関してアマゾンクロッシングと交渉した。
「アメリカの出版業界は、他言語の作品は3%しかないことで有名」という同社の編集者サラ・グンテルさんによれば、この見本市でテーマ国になった国の作家の作品集をアマゾンクロッシングが出すのは2回目。2011年のテーマ国だった、アイスランド人作家の作品集を出したのが最初だ。
「刊行作品のうち3冊が、キンドルショップの売上げベスト10に入ったことがある」とか。ブラジル人作家の作品集も、これに続く?(15日付フォーリャ紙より)