ニッケイ新聞 2013年10月16日
持続可能な開発という観点でフランス人が開発した、100%ブラジル製の〃緑の靴〃が、ブラジル国内でもお目見えしたという。
セアラ州で生産された棉を原料とした生地と、法定アマゾンで生産されたゴムといった純国産の原材料を使った靴は、2005年からフランスに輸出されていたが、この9月からはブラジル国内でも販売されるようになった。
製造、販売を手がけているのは、2003年まではニューヨークの銀行に勤めていたフランス人のフランソワ・モリリオン氏とセバスチアン・コップ氏。多国籍企業に新興国での〃持続可能な事業〃参入への助言をしたいと考えて世界に旅立った二人は、フランスの食品メーカー、アルテル・エコを顧客とした事で、ブラジルという新しい活躍の場を見出した。アルテル・エコは、ロンドニア州の生産者の組合からパルミットを買う事で、自然保護を考えながら農作物を栽培する農家を支援するという、従来とは異なった視点での事業を展開していた。
靴の甲に使う生地は、セアラ州内陸部タウアーにある無農薬栽培を行う生産者組合と提携して入手した木綿。原料は生産者700家族から直接買い上げる。
ゴムは「アマゾンのガンジー」シコ・メンデスを崇拝し、ゴムの木そのものを大切にしながら栽培する40家族の農家から購入。水質汚濁を避けるため、皮なめしにもアカシアの樹液を使うなどの工夫で生まれた靴は、05年からVejaという名前でフランスに輸出されてきた。2012年の販売数は12万足で、70%がフランス国内で売れたという。
国内向けの商品はフランス語で緑を意味するVertの銘柄で売り出しているが、販売価格は195〜289レアルと割高だ。利益は最小限に抑えているが、持続可能な生産形態の原材料にこだわっているため、キロ当たりのゴムの仕入れ価格が通常の倍の7レアルなど、原材料費が国内相場の倍かかるという。
2013年のVertの販売目標は、2006年の実績の7倍の600万ユーロ。多国籍企業としては、小規模な事業だが、利益よりも正しい事業という観点を優先する姿勢が国内外で受け入れられる事を期待した挑戦は、スタートラインに付いたばかりだ。(14日付エスタード紙より)