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「伝記問題」下院審議へ=表現の自由か〃検閲〃か

ニッケイ新聞 2013年10月22日

 9月以降、伯字紙やテレビ、雑誌で論争を巻き起こしていた「伝記問題」に決着をつけるべく、下院で今週、緊急会議が行なわれることになった、と19日付伯字i 時紙が報じている。
 「伝記問題」とは、カエターノ・ヴェローゾやロベルト・カルロスをはじめとした有名音楽家7人が「プロクーレ・サベール」という団体を9月に結成し、伝記を発行する際の本人、もしくはその遺族からの発行許可や肖像権の支払いなどを義務付けることを求めたことから表面化した。
 軍政時代には「表現の自由」のために戦ったインテリ文化人のはずなのに、自らの伝記を書かれる際には〃検閲〃する側に回るのか、との疑問が呈されている。
 同団体は「個人の名誉を毀損する可能性がある場合や商用目的」の場合に、事前了承を取る必要があるとする民法20条に基づいて抗議を行なっていた。
 だが、1988年制定の憲法では「許可の必要はない」とされており、作家や出版社側はそれを盾に反論していた。
 この問題は、そもそも2011年に全国図書編集者組合が、民法20条が違憲だとして最高裁に憲法違反直接訴訟(Adin)を起こした。そして13年3月には、同訴訟に基づいた民法改正法案が、下院の文化教育委員会や憲法委員会の審議でも、ほぼ満場一致で承認されていた。
 だが、下院議員74人がジウマ大統領の承認のもと、下院での投票に差し戻すよう要請したため、差し止められていた。
 「プロクーレ・サベール」の立上げはその間に行なわれ、有名人が人権侵害を叫んで行動を行なったことで話題を呼んだが、マスコミ側は〃検閲行為〃と反論し、騒ぎが拡大した。
 エンリケ・アウヴェス下院議長はこの事態を重く見て、きょう22日から下院での審議をはじめる。議長としては下院での投票を早めるのが目的だ。だが、最高裁のカルメン・ルシア判事はAdinの公聴会のある11月20、21日までの投票を禁じている。
 最高裁のジョアキン・バルボーザ長官は14日、「人権侵害の表現がある場合は検討の必要がある」としながらも、伝記出版の本人への了承の必要はないとの見解を出している。