ニッケイ新聞 2013年10月23日
サンパウロ州サンロッケ市の「インスティトゥート・ロイヤル」本部に18日未明、数十人の動物愛護活動家が侵入し、そこで飼われている複数の種の動物が、薬品の動物実験の対象となり残虐な扱いを受けているとしてビーグル犬178匹を運び出す〃救出作戦〃を行った。この件で翌19日も同施設で動物実験に反対する抗議行動が行われ、デモ隊と軍警、機動隊が衝突した。同日付G1サイトなどが報じた。
インターネット上の呼びかけで招集されたデモは19日午前、ラポーゾ・タヴァーレス街道56キロ地点に約700人が集まって行われ、子供や幼児も同伴で平穏な雰囲気の中、同施設をめざし行進していた。デモ隊は建物前で、他に隠して飼育している動物がいないことを証明する書類提出を求めたが、交渉が決裂、顔を隠した黒ずくめの集団がけしかけて暴動に発展、警察隊とデモ隊が同街道で約4時間にわたり衝突した。
この騒ぎで少なくとも4人が警察に連行されたが、2人は保証金を支払った後に釈放された。残りの2人は警察車両と報道機関の車を損傷した疑いがもたれている。
同施設のシルビア・オルティス実験室長によれば、18日未明の侵入騒動では動物だけでなく実験記録や書類まで持ち出されたため、運び出されたときに何匹の動物が実験途中にあったのかを把握できていないという。
地元警察では、侵入事件とともに実験動物への虐待があったかどうかの捜査を進めている。マルセーロ・ポンテス担当捜査官は、「虐待されていた疑いのあった動物を解放したことで盗難の罪から逃れられると勘違いしているようだが、犬を運んだ人物全員だけでなく、犬と映像に残っている人物にも罪がある」と指摘する。さらに、同市カルモ区では雌のビーグル犬2匹が放置されているのが見つかっており、侵入騒ぎで運び出された犬とみて調べている。
18日未明の侵入事件ではビーグル犬に加えウサギ7羽も運び出されており、活動家によれば「17日午後2時から、残虐な方法で犬が虐待を受け、地下に隠される」との匿名の告発があったことで侵入計画に発展したという。
同施設は、動物実験コントロール連邦審議会(Concea)が定めた規則の範囲内で行っており、動物が運び出されたことで進行していた業務が損害を受けたと主張しており、施設は事件後に閉鎖されている。
一方、同施設のポルト・アレグレ支部でも19日、デモが行われ、同施設と業務上の協力関係にある南大河連邦大学生物技術センターの女性職員は、「デモ隊が掲げていた紙に、私ともう一人の同僚の名前が書いてあって、〃彼女らを捕まえろ!〃と書かれていた。脅迫電話も何度も受けた」と証言している。
同センターでは遺伝子組み換え作物を研究している。センターのアルトゥール・ジェルマノ代表によれば脅迫は初めてではなく、2003年にセンターの建物は放火されるなど過去に一連の脅迫に見舞われたが、犯人は一度も捕まったことがないという。