ニッケイ新聞 2013年10月25日
静岡文芸大シンポ(24日付け7面)を取材しながら、浜松では〃地殻変動〃が起きていることが実感された。Jリーグの清水エスパルスやジュビロ磐田が二部降格の瀬戸際にいることからも、同県を地盤とする企業の不振が伺われる。同県きっての産業都市浜松は、工場の他地域や海外移転で弱体化しているとの話を聞いた。そんな時、最も必要とされるのは、外国でも通用する国際的人材だろう▼同シンポで北脇保之前市長が学生に向かって「皆さん自身がポ語やスペイン語を積極的に覚えて交流を深めてほしい」と言っていたのを聞き、考え込んだ▼「多文化共生」という言葉は、外国人住民を地域社会に受け入れるための取り組み、外国人への〃支援〃という上からのイメージが強かった。ところが、北脇氏の言葉からは、多文化共生を通して日本の若者自体が、地元に居ながらにして外国人と接して海外で通用する感覚を学び、外国語を活用する好機になる痛感とした▼であれば、世界における存在感を弱めつつあると憂慮される日本自体が、将来を模索する上での選択肢とも言えるのではないか。ブラジル日系社会には様々な共生経験が蓄積されている▼ブラジルでは「多文化共生」という言葉はあまり聞かない。むしろ『社会統合』と言った方が一般的だ。ブラジル文化自体が多文化を前提にしているからだろう▼今はまだ日本には一部に〃鎖国〃的な雰囲気があるとしても、いずれ世界とより統合した雰囲気を身にまとうようになるのだろう。在日ブラジル人が日本の多文化共生の試金石であることを、日系社会は胸を張っていいと思う。(深)