ニッケイ新聞 2013年10月26日
7月に発覚した「サンパウロ市地下鉄入札カルテル」疑惑の渦中にあるフランスの多国籍企業アルストンのブラジル支社社長が、本国の上層部に出したメールの内容が明らかになり、贈賄疑惑の人物との深そうな関係や、アウキミンサンパウロ州知事やセーラ市長(当時)と関係があるから「非常に有利」と書かれていることから、不正入札の疑いがさらに強まっていると24、25日付伯字紙が報じている。
7月初旬、ドイツの多国籍企業シーメンスがサンパウロ州検察局からの事情聴取に際し、1998〜2008年におけるサンパウロ市地下鉄やCPTMの入札でカルテルを行なっていたことを明かしたとされる。アルストンはスペインのCAFや日本の三井などと共に、このカルテルに加わっていた会社として指摘されている。
アルストン(仏パリ本社)は、ボンバルディアやシーメンスと並ぶ〃御三家〃の一つ。世界の鉄道車両の2割強を占めるといわれる多国籍企業だ。アルストン側は事件への関連を否定しているが、同社の元ブラジル支社(アルストン・ラッパ)社長(2000〜06年)のジョゼ・ルイス・アウケーレス氏が04年11月18日に同社の上層部に送ったメールの内容から、不正入札の疑いが深まった。
そのメールによると、アウケーレス氏はアルストン上層部に、サンパウロ州検察局から贈賄疑惑を持たれている一人アルトゥール・ゴメス・テイシェイラ氏をコンサルタントとして迎えるよう薦めていた。彼の容疑の一つは、CPTMの元運営局長(98〜2003年)だったジョアン・ロベルト・ザンボーニ氏に巨額の贈賄を行なったというもの。テイシェイラ氏は00年10月に10万3500米ドル、同年12月に11万3300米ドルをザンボーニ氏の口座に振込んだ。
アルケーレス氏は同メールの中で、当時サンパウロ市市長選挙で勝利したばかりのジョゼ・セーラ氏と、第一政権当時のジェラルド・アウキミンサンパウロ州知事(共に民主社会党・PSDB)について、「昔から良い関係を築いている」と言及、「この関係があるから今度の入札は非常に有利」と書き、05年の地下鉄CPTM入札への参加の重要性を本社に説いた。
アルストンは05年のサンパウロ市地下鉄入札で電車12台を2億2350万レアルで落札したが、この落札価格は相場よりも73・69%高値だと検察は疑惑視している。アウケーレス氏はこの入札に関して事情通のテイシェイラ氏に交渉を手伝ってもらうようにメールに書いている。この報道に対しアウケーレス氏は「メールの内容を誤解している」とし、25日付フォーリャ紙で贈賄の疑惑を否定している。
一方、セーラ氏やアウキミン知事は、アウケーレス氏のことはアルストン・ラッパ社長として認識していたものの、業務以上の関係を持ったことはないと否定している。