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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2013年10月29日

 「辛いときは、日本語で私たちに怒鳴ったっていいからね」。あるブラジル人の友人は、仕事をしながら大学院に通うコラム子をねぎらい、冗談交じりにそう言った。予想していた以上に厳しい授業や課題で挫折してしまいそうなときだったので、思わず涙が出そうだった。
 彼らにとっては、一人で外国に住んでいるという点が特に驚きに値するらしい。日本とはおそらく比較にならないほど家族のつながりを大切に考えているためだ。ブラジル人に混じって授業を受けていることに加え、それを思いやってかけてくれた言葉だったのだろう。
 当地に住んで通算3年になるが、住む期間が長くなればなるほど新鮮味は失われ、悪いところばかりが見えがちになる。「人の温かさ」というのは最初の留学時に実感していたつもりだったが、この国が他国に誇れる美徳だと、改めて思った。(詩)