ニッケイ新聞 2013年10月31日
「日本は窮屈。ブラジルは自由でいい」という台詞を口にした移民のほとんどは、戦後移民だった。戦前移民は故郷に錦をかざるため渡伯したと聞くが、戦後移民には〃日本脱出〃して当地にやってきた人が結構いたのかもしれない。
ドイツ生まれのコラム子の家人は米、日本に駐在し、当地に来た。「どこに永住したいか」と聞くと、「日本がいい。死んだら◎家(コラム子)の墓に入りたい」と答える。彼にとって住みたいのは母国ではなく、自分の価値観に合う国だ。
今は国境の垣根が低く、住みたい国を選べる。コラム子はいずれ帰国するつもりだが、それは仕事の得やすさや治安の良さなど合理的な理由からで、愛国心からではない。宗教や国を自己と同一視し、それを巡り争いが絶えない一方で、世界に新しい〃母国観〃が芽生えているのかもしれない。(阿)