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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年10月31日

 「アルタミーラの笹野さん、マラバの坂本さんもいたけど日系人。日本人は僕だけじゃないかな」。それを聞いてペンに力が入った。パラー州にあったブラジル最大の金鉱で80年に発見され、ゴールドラッシュの名を国内に轟かせたセーラ・ペラーダで6年働いた杉本有朋氏▼現在公開中の映画『セーラ・ペラーダ』(12年、エイトール・ダリア監督)を見て、3年前の取材での語りっぷりを思い出した。「欲張り共の争いばかり。それをどう切り抜けるかが勝負」「石をけり落としたり銃を撃ちまくる悪魔がいる」「殺したことはないけど間接的にはね…」「止めようかと思ったら金がでる。逃げられないギャンブルと同じ」—。取材でイメージしたままの世界が、スクリーンで繰り広げられた▼女人禁制のため、オカマの力が強く〃組合〃まであること、金と女を巡る裏切り、殺しのリアルさも聞いたそのまま。ガリンペイロの後ろで利権を得ている黒幕たちの話以外は、取材で知っている内容だった。短い時間で見事なまでに語っている杉本さんの伝達力に驚く。「積み上げるのではなく、地下に掘っていくピラミッド」。写真家、セバスチャン・サウガードの写真でも有名な光景も圧巻だ。詳しく知りたい人は映画もだが、本紙11年新年号を読んでほしい▼先日、本紙HPで同記事を見たという日本のテレビ局関係者から「取材したいので連絡先を…」との電話が。昨年亡くなったことを伝えたら残念がっていた。改めて話を聞いておいてよかったと思ったものだ。しかし、映画を杉本さんの解説とともに見たかったなあ。(剛)