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伝記問題=「あくまでプライバシーの問題」=検閲でないと音楽家ら主張

ニッケイ新聞 2013年11月1日

 ブラジルを代表する音楽家たちと出版社との間で起きた「伝記問題」をめぐり、ロベルト・カルロス、ジルベルト・ジル、エラズモ・カルロスの3人が10月29日、それぞれの主張を語ったビデオを公開して話題となっている。10月30日付伯字紙が報じている。
 この問題はカエターノ・ヴェローゾのマネージャー、パウラ・ラヴィーネ氏が中心となり、伝記出版社や作家に対し、本人や遺族への事前許可と肖像権の支払いを求め、カエターノら7人の有名音楽家たちと「プロクーレ・サベール」という団体を結成したことで注目された。
 これに対し、各マスコミは一斉に「軍制時代には〃表現の自由〃を求めて戦った音楽家が、今度は〃検閲〃する側になるのか」と反論し、同団体は不利な立場に追い込まれていた。その流れで発起人の一人ロベルト・カルロスは27日に、出版社側が求める「本人許可なしでの伝記発行の法制化」賛同の発言を行なっていた。
 29日に公開されたビデオでジルベルト・ジルは、「個人のプライバシーを守ることは検閲行為と違う」と主張し、「伝記内に本人への攻撃や行き過ぎた表現、嘘などがあった場合に異議申し立てをできる保証が欲しいだけだ」と語り、伝記発行差し止めが目的ではないと説明した。
 さらにエラズモ・カルロスは、「自分たちが中傷されたと感じる場合には、自分たちの権利を求めるということ。我々が出版社に発行許可を出すことを前提にしたり、作家の思い通りに書かせない、ということではない」とし、〃検閲〃行為自体には反対であることを示した。
 ロベルトは「司法が憲法で保障されたプライバシーの権利と、情報伝達に関する基本的な権利の両方をうまく結びつけるような法案を作ると私は信じている」と語った。
 音楽家たちの本音をアピールするメッセージにはなったが、各人の主張には食い違いも見られ、まだまだ終息には時間がかかりそうだ。