ニッケイ新聞 2013年11月8日
国内の航空各社が深刻な経営難に陥っており、業界では過去2年で総じて50億レの赤字を記録した。7日付エスタード紙が報じた。
航空各社が民間航空監督庁(ANAC)に報告したデータをまとめ、7日に公表された航空輸送部門の年報によれば、損失は特に昨年悪化し、前年から2倍以上の35億レにまで上がったという。
この35億レのうち80%以上を大手2社のTAM、GOLが占めており、金額にして29億3千万レの赤字。軒並みマイナス収支を記録した10社のうち、TAM貨物の傘下にあるAbsaカルゴだけが昨年は黒字だった。
業績不振にあえぐのは大手だけではない。現在合併の方向で進んでいるAzulとTripの昨年の損失額を合計すると3億8千万レ、前年の2倍以上の赤字となった。
航空専門家でサンパウロ大学教授のジョルジ・レアル氏は「各社はここ数年、航空機を購入してシェアを高めることに躍起になっている。熾烈な価格競争で、航空券の値段は限度を超えたところまで落ちた」と分析する。
航空機の数は、2009年には416だったが12年は518に増えたが、その大半がボーイング社とエアバス社の製品だ。購入した新しい旅客機を埋めるため、各社は燃料価格が高騰している中でも航空券の値段を下げた。
ANACによれば、航空券は09年から12年の間に平均383レから294レまで下がった。同期間に石油1バレルは75ドルから100ドルにまで上がっている。
「航空各社の業績悪化は、燃料価格高騰を反映したものだ」とは、ブラジル航空会社協会技術コンサルタントのアダルベルト・フェベリアーノ氏の見方だ。ANACのデータによれば、各社が燃料費に充てるコストは09年から12年の間に29・8%から38・5%に増えている。
ここまでの赤字に達してしまった各社は収益性回復を図り、既に航空券の価格の見直しを始めている。今年上半期、国内線のチケットの平均価格は302・98レで、昨年同期と比べ4・15%上がっている。
また、収益性の低い便を減らすことも始めており、昨年12月時点で航空券の数は前年比7・4%減、今年9月は前年同月比2・94%減だった。
減便をすると今度は従業員の解雇となる。航空業界の従業員数は09年から11年の間に25%増えたが、昨年になって募集人数を減らした。昨年は業界では6万1120人が解雇されている。
ただ、「各社の損失額に比べれば、この(解雇)数はわずかなもの」というフェベリアーノ氏は、航空券価格の調整で来年は少し上向きになるとみる。「今年は需要の伸び悩みとドル高で打撃が大きかったが、来年は少なくとも今年よりも損害が少なくなればいい」と話しており、黒字収支はまだ見込めないとの厳しい見方を示している。