ニッケイ新聞 2013年11月8日
日本人移民の子・孫である私は現在、72歳です。人間の最大の資産は名誉だと、子供の頃から教えられました。そのように育ちました。そのように子供を教育してきました。40年以上にわたる公務生活を経て、そのように老いてきました。
そんな私が、ある企業家の金銭的私利私欲を止めたことの仕返しをしようと、途轍もない訴えをしており、それを鵜呑みする訳にはいきません。証拠がないにもかかわらず、正に品格のない人達が私の名誉を傷つける目的で犯人扱いをしている、という本当に酷い仕打ちです。しかも、裁判ではまだ審理が行われていないうえ、判決も下されていません。
何があったのでしょう。検察庁は、私の他に企業家や公職員を含む8人に対し「行政不誠実」行為による損害賠償を提起しました。訴えは、私が市長であったころ、2004年に完了した公共交通の競争入札時における不正入札に関してです。
検察側は、私の名誉を傷つけ犯人扱いをするため、入札前の2003年に録音したであろうテープを含む、エロレス・グループ(ミト交通旅行社の所有者)の言い分しか考慮に入れていないわけです。その録音は、素人にはとても聴解不能のものであります。しかし、エロレス一族に対する汚職の試みの証拠として、裁判書類に添えられたテープ起こしの内容は酷いものです。その内容は、エロレス一族が虚偽を編集したものです。
2001年、モジ・ダス・クルーゼス市長として就任したとき、憲法を遵守するため、公共交通の独占を崩さなければならないことを認識しておりました。そもそも、70年間にわたってバスサービスを執行していたエロレス・グループが提供していた乏しいサービスへの限りない苦情に応えるべく、市民への約束の1つとして守らなければなりませんでした。
1997年には、私の前任者はそのための入札手続きを始めましたが、最後まで遂行しませんでした。しかし、我々は元々の入札モデルを工夫して競争入札を公告しました。目的は、公共交通のサービスを2社に委ねることでした。数十社のうち、ミト社とジュリオ・シモンエスが落札しました。
入札公告では、各社は約90台のバスで市民へのサービス提供をすることが条件付けられていました。また、無償にて「環状」(中心部の停留所専用)と呼ばれるコースにも3台調達しなければなりませんでした。更には、入札では30年間という有償期間も規定していました。すなわち、各落札者は市役所に対し、契約期間中1カ月につき凡そ3万5千レアル(2004年現在の金額)を支払わなければなりませんでした。
私の名声を汚すため、市役所において登録されている入札の要件がわざと歪曲されました。すべてがエロレス一族の言い分によるわけです。検察庁は入札のルールを十分に確認せず、その虚偽を鵜呑みにしました。
何故2003年に起きたであろう不正入札が、エロレス一族によって2009年にしか告発されなかったのでしょう。これは、2009年がミト社の契約が市役所に取り消された年だからです。契約の取消に至った様々な必要な調査は、私の任期の最後の年である2008年に行われ、その調査報告書を基にその後任者は当該バス会社との契約を取り消し、新しい会社と契約しました。
ミト社との契約が取り消されたのは、市民へのサービス提供の存続が不可能であったからです。当社は、たった6台のバスしか走らせていなかった時期もありました。その他のバスは、融資の返済に困り債権者であった機関などに差押えられていました。
エロレス一族は、会社の金銭的状況が困難であったことを十分理解していました。親会社(エロレス交通旅行社)自体が入札に参加できなかったので、子会社であるミト社もどう破産を防げたのでしょう。正直な解決法を見出せず、私に対する悪質な仕掛けをすることにより、入札を無効にして市に対し損害賠償を求めることを図ったのです。
このような狡猾な計画は、いつでも使えるように2003年に立てておいた次第です。結局、ミト社の契約が2009年に取り消されたときに使ったわけです。当時の検察官は、前述の録音テープを証拠として認めず、起訴しませんでした。ところが、取調べが完了していないため、現在担当している検察官がこの話を復活させました。
エロレス一族の私に対する不愉快な気持ちは簡単に理解できます。しかし、家族のビジネスを運営する能力がないことを認めたうえで、挽回を目指して努力をするよりも、エロレス一族はあえて私を害するための仕掛けに力を入れた次第です。
しかしながら、幸いモジ・ダス・クルーゼス公共財務法廷の判事であるブルーノ・マシャード・ミアノ氏の裁判決定は、すべての司法関係者が偏っていない証拠であります。当該判事は、総額25億レアル(2・5兆レアルではなく)にも及ぶ公共交通会社と関係者の資産凍結の申し立てを却下しました。
裁判官の見解では、モジ・ダス・クルーゼスの年間予算の2・5倍に匹敵する資産凍結額が多すぎるとして、検察庁を批判しました。相手方の言い分を聞かずに資産凍結するのは「性急な措置かつ非合法・基礎のない決定」となる、と指摘しました。
裁判官は更に、検察庁の申し立ては「エロレス兄弟の言い分に強く依存している」、また「信憑性が低いので訴えを証明する必要がある」とも指摘しました。何故なら、「高利益をもたらす事業の契約が取り消され、家族の財産が失われるなか、その怒りと恨みは推定できる」と説明しました。
裁判記録に添えられている録音に関しては、真正さが疑わしい可能性を認めました。「鑑識局は、言葉遣いと名前の挙げ方で当該人物の声であることを断定した。従って、科学的予言ではなく、観察による結論である」と判事は技術的鑑定がなかったことを断定しました。
本件に関しては裁判所からまだ正式な通知を受けていないのです。通知を受ければ法的措置を取るつもりです。再び、根拠のない虚偽の訴えを強く否定します。競争入札が不正ではなかったこと、また契約の取消が合法的に行われたことを重ねて肯定します。それと、何よりも裁判で真実が実証され、訴えを覆すことを期待しています。
私が市長を務めた2001年から2008年までの決算書はすべて州会計裁判所において認可されました。立候補権を全面的に行使できる状態にあり、前科となる刑事事件による有罪判決を一切受けていません。どうか、私が公選の役職に立候補できない、というような悪い人間によって流された虚偽の噂に耳を傾けないでください。
私を2度にわたり市長に導いて下さった(86%の支持率で2期目を終えた)モジ・ダス・クルーゼス市民の福利向上のため、大企業の金銭的私利私欲を妨げたことを認めます。公共交通も、葬儀サービスの独占もそうでした。タボアオンというモジ市の工業地区におけるゴミの埋立地もそうでした。この場合、経済力をもつその会社は、私の行動に関する虚偽をばら撒くため、社会の一部の人たちに大金を注ぎました。幸いにも、時間をかけると真実が明白になります。そして、約束を守り、親から教えられました道徳的価値観のもとで自分の良心に従って生きてきたことに悔いはありません。 《註=安部順二は連邦下院議員(PSD-SP)、またモジダスクルーゼス市の元市長(2001年〜2008年)》
◇お詫びと訂正◇
10月25日付け7面「安部下議に収賄疑惑」記事中に間違いがあった。下議がバス会社からの告発を受けたのは事実だが、モジ裁判所は証拠不十分として訴えを受付けなかった。つまり「裁判にならなかった」のに、今後裁判があるかのような記事内容だったことを心からお詫びし、以下、安部下議による例の件に関する説明の全文を掲載することで訂正に代える。(編集部)