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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年11月9日

 なんとも不思議なものが、日本列島に流行?っている。奈良の旅館や名の知れた東京と大阪のホテルの著名な店で出される料理が、インチキ物ばかりだというのだから驚き入る。ああした銘店に足を運び、豪華な味に接したいと願うのは庶民の夢であり、食器の素晴らしさに感動し井戸端会議の話題にもなるし、和食なら10年も20年も現場で鍛えた板前の腕に惚れ込み、包丁の冴えに目を見張る▼近頃は、割烹の店が多くなり、味にうるさいお客さんの目の前で魚の刺身と焼き物や煮物などを料理してくれる。割は切ることであり、烹は煮るの意だが、この魔法使いのような技を板前は惜しげもなく披露し、客らをびっくりさせる。そして—澄まし汁にしても、家庭の味とは遠く、ちょっと料理が好きな主婦でも立ち及ばない。鰹節と昆布を使うのは同じでも、あの香りと味は、やはりプロの腕には敵わない▼プロとは、これほどに厳しいものだが、洋食の総料理長とか日本料理の花板(板長とも)にも不届きな輩がいっぱいおり、食卓にインチキ料理を乗せ平気の平左なのだそうな。これは個人の好みにもよるが「日本の牛肉が一番美味い」派の独りであり、あの霜降りに浮かぶ脂がいい。ところが悪賢い料理人がいるらしく、安物の肉に牛脂を注入し「高級ビーフステーキ」として客に出しニコニコしていたというからー許せない▼海老も「車海老」と偽ってブラックタイガーを使い、バナメイエビを「芝エビ」だと偽り、活魚と称し冷凍魚だから言語道断である。こんなイカサマ料理人は即刻—包丁を取り上げ解雇が筋というものである。(遯)