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輸送費で食物価格に差=ブラジルの費用は米国の3倍

ニッケイ新聞 2013年11月13日

 ブラジルとアメリカ。どちらも世界有数の大豆やトウモロコシの生産国で、両国の生産者の作付面積や生産性は甲乙つけ難いレベルに至っているのだが、農場を一歩出ると、両国の間には歴然とした差があるという。
 運輸業専門のコンサルタント会社、マクロロジスチカ社長のロベルト・パヴァン氏によると、ブラジル人が食料品を買う時に払う金額1ドルに付き8セント(2・30レアルに付き18センターボ)は、農場から工場、港、スーパーマーケットなどに運ぶ輸送経費だという。一方、米国アイオワ州のトウモロコシ生産者協会によると、米国の人々が食事に使う費用1ドル当りの輸送費は3セントで、ブラジルの約3分の1だ。
 両国の輸送費の差を最も強く感じるのは、米国産の農作物との間の競争力の差が出る農産物の輸出業者だというが、ブラジル国内の消費者も毎日の食費に米国国民以上の負担を強いられている事になる。
 例えば、物価がほぼ同じとされるニューヨークのマンハッタンのスーパーで2・5キロ入り1・99ドル(4・60レアル)だったバタタ・イングレーザが、サンパウロ市西部のスーパーでは1キロ5レアル。マンハッタンのスーパーと同じ2・5キロなら12レアルだ。ミニキャロット(小型の人参)を通信販売で購入する時も、米国の500グラム1・69ドル(3・89レアル)に対し、ブラジルでは250グラムで5・69レアルと46%割高だ。
 米国の輸送費が安いのは、同部門への投資として国内総生産の4%を費やしてきた結果だが、ブラジルの投資額は国内総生産の0・5%のみ。投資の大半を道路網の整備に当てるブラジルに対し、米国は鉄道網や水運にも投資を続けてきた。
 ブラジルの農産物の中でも穀物は輸出への比重が高く、マット・グロッソ州などの中西伯の穀物農家が輸送費の高さや能率の悪さ故に流した涙の量は計り知れない。
 マット・グロッソ州大豆・トウモロコシ生産者協会技術ディレクターのルイス・ネリ・リバス氏によれば、60キロ入りの大豆1袋を同州の主要生産地ソリーゾからサンパウロ州のサントス港までの2千キロ運ぶ経費は8・60レアルかかる。米国では、アイオワ、イリノイといった中西部の州から大豆60キロをメキシコ湾の港まで運ぶ費用は1・20ドル(2・80レアル)だ。
 リバス氏は、マット・グロッソ州は最後の収穫期に大豆300万トンを輸出しており、高速道路の輸送費だけで16億レアルを費やしたとコメント。これだけの金額が農家への補助金や流通などに利用出来ればブラジルの農業事情は大きく変わるが、来季の収量は昨農年以上が見込まれ、「輸送網が整備されていないために生じる経費はいや増すばかり」だという。
 生産地や鉄道輸送の拠点などに貯蔵設備を完備し、鉄道から船舶への積み替えも天候に左右されない米国に比べ、ブラジルは、生産地の貯蔵設備すらなく、官民混交の鉄道網、雨が降ったら積み込み作業が不能となる港など、改善すべき課題が山積み。収穫期には穀物を積んだトラックによる渋滞が起きるのが当たり前のブラジルでは、貯蔵設備なども含むインフラ見直しが急務である事がますます明白になって来ている。(10日付エスタード紙より)