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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年11月15日

 パウリスタ大通りの銀行では恒例のXマスの飾りつけが始まったばかりだが、ヴェネズエラではすでに11月1日に祝われた。マドゥーロ政権が政策でXマスを〃前倒し〃したというから妙な感じが漂う▼熾烈な選挙戦を無理矢理勝ち抜いて政権を継承したマドゥーロ大統領だが、経済が立ち行かず末期的な様相を呈している。エスタード紙9日付けによれば、この12カ月間のインフレ率は54%に上る。トイレ紙をはじめ牛乳など基礎食料品が特に不足する▼その理由は財政バランスが悪いことだ。石油輸出に極端に依存した体質のため、大半の生活必需品を輸入に頼る。チャベス前政権は公務員を激増させたから政府支出はただでさえ膨大だった▼そこへ選挙戦に勝つために、臨時大統領だったマドゥーロは大盤振る舞いを国民に約束した。肝心の収入は石油公社に頼っているが、設備投資を惜しむので生産能力は減退するばかり。つまり収入は減る一方なのに、莫大な支出を抱え込んだ▼しかも為替を固定させている関係で通貨が超割高になり、闇ドルは10倍だとか。ドル不足ため貿易会社には割当制でしかドルを渡さない。家電品はすべて輸入だから、販売会社は高く売らないと元が取れない。でも政府はそれを規制して安く売らせようとする。そこで起きたのが、政府の指導を聞かない家電販売店網から略奪するように、政府が国民に指示するという異常な事態だ▼大統領は「Xマス気分を盛り上げて、日々の苦しみを吹き飛ばそう」と〃前倒し〃の理由づけをし「幸せ省を創設する」とも宣言した。ある意味オメデタイことではあるが、お祝い気分には、なれそうもない。(深)