ニッケイ新聞 2013年11月19日
写真=「研究には愛のある動機が重要。金儲けが先に来ると長続きしない」と熱く語った清水教授
在サンパウロ日本国総領事館(福嶌教輝総領事)は4日、サンパウロ州立総合大学工学部校舎で、東京工業大学の清水優史名誉教授を招いた講演会を開催した。日本政府文部科学省国費留学生同窓会(ABMON)との共催で、同会の20周年を記念したもの。
講演テーマは「自由に発想することの大切さ—ロボコンの現場から」。前半は、日本のロボット研究の事例として、本田技研工業が開発した二足歩行ロボット「ASIMO」を、動画を交えながら紹介。障害物を避けて歩行出来るメカニズムなどが説明されると、集まった約90人の観衆は感心した様子を見せていた。
「これからの世の中について話したい」と始まった後半は、第2次大戦後から人口が大きく増え、食料や金属、エネルギーの消費も急増してきたことを図示。これを「人の力を豊かな生活のために注ぎ込めるようになったから」としながらも、現状が続くと深刻なエネルギー、物資不足が起こることを説明した。
「新たなアイデアがなければ今の平和な世の中は続かない。若い世代のこれからにかかっている」と警鐘を鳴らす清水教授。「経験則に基づいた考えからは柔軟な発想は生まれない。いかに自分の中の常識を打ち破れるかが鍵」と話し、スーパーボールや卵、糸巻きを使った実験を通して、「経験から見える事象がその物事の全てではない」「可能性を否定しない」ことの重要性を説いた。
終演後には多くの質問が寄せられ、盛況のうちに幕を閉じた。特別招待されたエドゥアルド・ゴメス高校(サン・カエターノ・ド・スル市)の生徒の一人、カマダ・ニコラスさん(15、三世)は「航空工学に感心がある。本当に面白かった。良いアイデアを提言できるようになりたい」と目を輝かせていた。
生体工学、医療工学が専門の清水教授は、同様のテーマの講演を国内外で50回以上行っており、ブラジル訪問は4回目。本紙の取材に対し「未来を担う若者たちにとって、少しでも役立つものになれば」と語った。