ニッケイ新聞 2013年11月20日
リオ市北部のチジュカ区のサエンス・ペニャ広場の、ある木曜日の朝。常に人で賑わっているこの広場では、この日も老人がカードゲームに興じたり、手工芸品を売るテントに人が群がっていたり、住民が公共の運動器具で体を動かしたりと、いつもと変わらない光景が広がっていた。ただ一つだけこれまでとは異なるのは、ゴミが地面にほとんど落ちていないことだ。よく見てみると、落ちているのは木の葉、煙草の吸殻がほとんど。これと似たような風景が他の区でも見られる。
これは、リオ市が今年4月に制定、7月から実施した、公共の場所にゴミを捨てた人に罰金を科す条例「ゴミゼロ」プログラムの成果だ。8月20日からは罰金徴収も始まり、住民の意識や行動が変わり始めた。罰金徴収開始からの3カ月間で、公共の場所でのゴミのポイ捨ては50%減ったと発表された。
リオ市によれば、今月14日までに罰金を科した件数は1万3890件に上る。ただし、実際に支払われたのはそのうち2071件にとどまるため、次の課題はクレジット保護サービス(SPC、銀行や商店、学校などへの債務不履行の有無などの情報を集め、融資や分割払い希望者の信用度を判断する資料を提供する)にある債務不履行者の名前をリストアップすることだ。
罰金の金額は捨てられたゴミの大きさや量によって様々だ。例えば犬の糞なら98レ(約4300円)で、大量のゴミの場合は3千レ(約13万2千円)に及ぶ。
最も罰金件数が多いのはリオ市の中心部で、5022件に上るが、その中で、罰金請求のための書類提示を拒否し、警察署に送られた例が10件あった。
リオ市の都市清掃会社(Comlurb)のビニシウス・ロリズ社長によれば、市全体で回収されるゴミのうち60%が家庭ゴミ、40%が公共ゴミだ。量としては変わっていないが、道に捨てられるゴミの量は減り、同時に道に設置されているゴミ箱のゴミの量が増えたという。
「このプログラムの対象になっている道路では、掃除夫(婦)の仕事が変わってきている。掃いて集めるゴミの量が減って、ゴミ箱のゴミを回収する回数が増えた」と指摘する。中心部のリオ・ブランコ大通りでは、プログラム実施前には毎日5、6回掃き掃除が行われていたが、今では3回になったという。
その日の朝。同広場で一件〃摘発〃された。メトロの駅近くのガードレールに座っていた男性は、煙草を吸いながらジュースを飲んでいた。数分経ち、男性はジュースのボトルを持ってバス停へ。その途中でゴミ箱から4メートル以内の場所に煙草を投げ捨てた——そこであえなく御用に。157レアル(約6900円)の罰金となった。「急いでいたんだ。この政策には賛成だけど、罰金の料金が高すぎる。でも僕が間違っていたから払わないとね…」とつぶやく。
住民の意識改革が政策の目的だ。ロリズ社長によれば、住民の行動が変わった暁には、将来的に罰金が廃止される可能性もあるという。
「例えばシートベルトを締めていなかった車の運転手は罰金を払っていたが、その後、時間とともに、人々はその必要性を認識し始めた。これと同じことが起こってほしい」。(13日付オ・グロボ紙電子版より)