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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年11月20日

 「五輪はリセット(やり直し)する良い機会」。竹中平蔵元蔵相の先週の講演で、そんな言葉に考えさせられた。竹中氏は2020年の東京五輪に向けて羽田空港にもっと国際線を乗入れるなどの国内改革や規制緩和をする理由にできるとの意味で、前掲の言葉を出した▼これを聞いて、ブラジルの場合はむしろ来年の「W杯」だと考え直した。というのも、メンサロン裁判の一部が結審して、労働者党(PT)の元党首、金庫番、官房長官がそろって刑務所行きになったからだ▼現与党のまさに核心にいた3人が、その政権が指名した最高裁判事によって汚職を裁かれて投獄されるという事態は、実に〃民主的〃だ。驚くほどきちんと三権分立が機能している。当国にとっては歴史的な瞬間だ▼少なくとも今までは「与党要職にある人物は罪を問われない」のが不文律なのかという雰囲気があった。労働者党の中でも、良い一部分がこの判決を支えていたのだろう▼ブラジル初の黒人の最高裁長官が、この判決実行(投獄)を指示したのが、共和制宣言(王制廃止)の祝日だったのも象徴的だ。前近代的な王政を底支えしていた奴隷制度が廃止され、将棋倒しのように翌年に同宣言が出された。黒人最高裁長官就任を奴隷解放になぞらえれば、「ブラジル政界の汚職体質」は奴隷制や王政のような前近代的なものであり、黒人自らがこの判決で「ブラジルをリセットした」ように見えた▼その判決を支えた社会背景には、6月の〃抗議行動の波〃がある。来年のW杯を契機に、国民全体が社会の根本的な部分をやり直そうと政権に求める機運が高まっている。サッカー以上にこの展開が楽しみだ。(深)