ニッケイ新聞 2013年11月26日
過去2年で50億レの損失を記録し、今年は昨年比ゼロ成長といわれるほどの経営不振に陥っている国内の大手航空会社だが(今月8日に詳報)、世界中からの観光客の訪伯が見込まれる来年6月のW杯は、各社にとって必ずしも救いではないようだ。24日付フォーリャ紙が報じた。
それどころか、W杯の開催で2014年は国内便の需要が減り、それに伴い収益も減ると各社は見込んでいるという。ブラジル航空会社協会のエドゥアルド・サノビック会長は「W杯開催期間中は、出発の2日前に正規料金を払って便を利用するビジネスマンはいなくなるだろう」と話す。各社の懸念は、こういった商用の渡航が正規より安い料金で利用する観光客に取って代わることだ。
例えば、2006年大会の開催国ドイツでは、ベルリン国際空港の利用客の動きは、05年が前年比15%増だったのに対し、06年は18%落ち込んだ。2010年大会の開催国南アフリカでは世界的金融危機の打撃をカバーできず、首都ヨハネスブルグの空港利用客は前年比6%増だったものの、08年より数は少なかった。
W杯を前に楽観的、悲観的な見方が混在しているのは航空業界だけではない。世界中の観光客訪伯を見越し、〃投資の嵐〃が起きたのはホテル業界だが、国内の主要なホテルチェーンを代表する団体のFOHB(ブラジルホテル業者フォーラム)によれば、ベロ・オリゾンテ、ブラジリア、クイアバ、マナウス、サルバドール、ポルト・アレグレ、レシフェの開催7都市では既にホテルベッド数が超過状態にあるという。また、2012年から15年までの業界の成長見込みも18%から16%に下方修正された。
W杯後の現在の南アフリカを調査のため訪れたコンサルタントのトリシア・ネーヴェス氏は「国際的なイベントを開催できるようになるには、国は準備が必要。サンパウロ以外の都市では素人がホテルを建てている場合が多い」と話しており、W杯を利用してブラジルが観光業界のサービスの品質を上げる能力を疑問視する。
スポーツのビッグイベントの中長期的な経済効果は、自動的にもたらされるわけではない。WTTC(世界旅行ツーリズム協議会、世界の観光関連企業役員で構成される非営利団体)のランキングにおいて、ドイツは上がったものの南アフリカは下がっている。
広告マーケティング大学(ESPM)で教鞭をとるフレデリコ・トゥローラ氏は、W杯の経済効果を今から見通すのは早いとの見方で、「W杯の1カ月は社会の動きが止まることを見越し、製造業ではその間をカバーするために生産量を上げてくる」と見込む。
また、ブラジル代表が勝ち進めばそれだけ祝日が多くなるために、大会でのチームのパフォーマンスも経済効果に影響するという。