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SBPN=「五輪はアベノミクスに追い風」=竹中平蔵 日本経済を解説=2020年に向け景気回復するか

ニッケイ新聞 2013年11月28日

 サンパウロ市の文協ビル大講堂で11日、日本の元総務大臣で慶應義塾大学教授などを務める経済学者の竹中平蔵氏が「2020年東京オリンピックを見据えた日本経済の成長の行方と挑戦」をテーマに講演を行った。ブラジル日本研究者協会(SBPN、宮城パウロ会長)の主催。

 竹中氏は講演の中で、安倍晋三首相が中心となって推し進める経済政策(アベノミクス)について、機軸となる三つの政策〃三本の矢〃を解説。「やろうとしていることは理論上100%正しい。争点は実現可能かどうか」と話した上で、第2四半期GDP成長率が3・8%増、過去1年間の株価上昇率も60%を超えるなど、ここまでの段階で一定以上の成果を上げていることを評価した。三本の矢とは「デフレ克服のための積極的な金融緩和」「機動的な財政政策」「成長戦略」の三つだ。
 一つ目は、長引く経済停滞の根源をデフレ(物の価値の減少)と捉え、日銀と協力しながら市場に流通するお金の量を増やすことで2%の物価上昇目指すもの。竹中氏はこの効果について「『デフレからの脱却を目指す』という意思を感じ取った国民の〃期待〃を変えたことは重要」と話し、景気回復の一翼となったことを主張した。
 二つ目は、短期的な目線では財政が赤字になることにとらわれ過ぎず、公共事業などを増やすことで経済に刺激を与え、中期的には2020年を目処に財政再建を図るというもの。前者についてはすでに今年になってから10兆円の補正予算を組むなど積極的な動きが見られる一方で、後者は「全くこれからの話。毎年1兆円ずつ増えると言われる社会保障費への対策も不透明」であるとし、「この矢の後半半分はまだこれから」と表現した。
 三つ目は、法人税の緩和など、経済成長に向けた具体的な戦略を指す。竹中氏は「成長に打ち出の小槌はない」と前置きした上で、税制面で民間企業に自由を与える重要性を語り、現在国会で特別な規制緩和が認められる特区の整備に関する審議が行われていることを説明した。
 これらを踏まえ、35の財政再建項目の達成目標年次である2020年に開催される東京五輪は、インフラ整備による直接的な経済効果(都の試算では約3兆円)、世界への露出が拡大することで国の魅力を押し出すことが可能となる等のソフト面の効果、そして法制を含めた国内整備を進める絶好の口実となり、規制緩和の糸口となるという3つの効果を持つことを主張し「政策実現に向けて大きな追い風となる」とまとめた。特に三つ目については、「特に緩和が難しく〃岩盤規制〃と呼ばれる規制も含め、リセットするチャンス」と話した。
 来場した秦豊司さん(78、広島)は「何かの雑誌で『日本は2025年で潰れる』と読んでいて不安を感じていた。明るい兆しが見えたように思う」とほっとした表情を見せていた。