ニッケイ新聞 2013年11月29日
身分証明書などをすべてなくしたため、ブラジリアに程近い町の病院で長期入院を余儀なくされている婦人が、テレビのニュースを見ていた人から「君のお母さんだ」と知らされた娘と54年ぶりに対談した。
5カ月前から連邦直轄区ソブラディーニョの衛星都市にある病院に入院中のエテウヴィナさんは54年前、当時11歳だったデウズイッタ・ドウラードさんをバイア州西部のサンタマリア・ダ・ヴィトリアに住んでいた別の家族に預け、連邦直轄区にやってきた、いわゆる出稼ぎだ。
デウズイッタさんは、「帰ってくる」という母親の約束の言葉を信じて待ち続けていたが、エテウヴィナさんの消息は途絶え、所在も分からないまま54年が過ぎた。
そんな折、グローボ局が先週流したニュースで、身分証明などの書類をすべてなくしてしまったため、回復後も退院許可を受ける事が出来ず、社会福祉士らが書類再発行のために奔走している女性が居るという報道を目にした男性が居た。
パウロ・ロベルト・ラモスさんはデウズイッタさんが預けられた家の子供の一人で、デウズイッタさんとは兄弟同様の関係だ。パウロさんは直ちにデウズイッタさんと連絡をとり、「君のお母さんだ」と知らせる一方、一日に何度も連絡をとりあい、エテウヴィナさんをバイア州に連れて来るために、親戚縁者で必要な書類を探す事にした。
その結果発見された結婚証明によれば、エテウヴィナさんは86歳。インターネットで54年ぶりにデウズイッタさんと対面したエテウヴィナさんは、自分には孫やひ孫まで居ると知り、感無量の面持ちだ。孫に当たるイヴァナ・ドウラドさんは、エテウヴィナさんがバイア州に来る事に大賛成で、「大歓迎よ、ちゃんとみんなで面倒を見るから心配しないで。ここに家族が居るんだから」と語っている。
インターネットで54年ぶりに対話を交わしたエテウヴィナさんとデウズイッタさん親娘。「母さんも一日も早く私に会いたいと思っているに違いないわ。母さんも私も至福の時を過ごせるはずよ」と言うデウズイッタさんは、すべてが上手くいき、母親が600キロ離れたバイア州に着いた時は「何をさておいても母さんを思い切り抱きしめたい」と語っている。(25日付G1サイトより)