ニッケイ新聞 2013年11月30日
11月20日に日本の法務省が発表した統計によれば、在日ブラジル人の減少がやまず、ついに19万人を切った。最も多かった07年末に比べ、実に約3人に1人の割合で帰伯した計算になる。一時ビサ所有者中心に帰伯した影響で、永住者資格をもった在日ブラジル人の割合は07年末に比べて倍増し、在留者の定住志向がさらに高まったようだ。その一方で、帰伯した人たちの状況は決して好ましくないようだ。
法務省「平成25(2013)年6月末現在における在留外国人数について」によれば、6月末時点におけるブラジル籍者の数は18万5644人。前年末比で2・6%(4937人)減少した。リーマンショック前年で、最も多かった07年末(31万3771人)に比べると、およそ13万人も減少した。
雇用先が決まっていないと日本の定住ビザの更新が困難となっていることや、人材募集をする企業が減っていることが減少の要因といわれる。それに加え、日伯両国を往来するデカセギの研究をしている「首都大学東京」(東京都八王子市)都市教養学部の丹野清人准教授によれば、昨今の日系企業のブラジル進出ラッシュに伴って、それに雇われることを期待して帰伯しているケースが見られるという。
帰伯者の多くが、主に二世向けの「日本人の配偶者」、三世向けの「定住者」などの一時滞在ビザだったという傾向があり、結果的に残留者には永住資格所有者の比率が高まった。
12年末「都道府県別在留資格別在留外国人」統計によると、在日ブラジル人総数の約60%(11万4632人)が永住者資格取得者となっており、07年末時の永住者資格取得者が総数の約30%(9万4358人)であったのに比べると、その比率は倍となった。
なかでも目をひくのは、愛知県豊橋市や静岡県浜松市のような集住都市以外でも、永住資格者の比率が高いことだ。ブラジル籍人口が千人以上の都道府県で、永住者比率が特に高いのは広島県(71%)、岐阜県(68%)、神奈川県(67%)など。
一方、帰伯者の状況は決して好ましくないようだ。丹野准教授が調査で出会った、30代〜40代の働き盛りの多くが、仕事はしていても、家族の生活を支えるための十分な収入を得られない「半失業状態」にあるという。彼らに共通するのは、学齢期前後に訪日し、当地での学歴がないこと。当地企業は一般に、日本で学校を出た者よりもブラジルで教育を受けている者を優先する傾向があるため、日本での学歴が通用しないかのようであるという。
続々とブラジル進出する日系企業などで雇用されることを期待して帰伯しても、〃ブラジルの学歴〃という壁があり、期待とは大きなズレが生じているのが現状ようだ。