ニッケイ新聞 2013年12月4日
サンパウロ日伯援護協会(菊地義治会長)の11月度定例役員会が28日、本部会議室で開かれた。会議が開かれる約1週間前に、日本国際協力財団の神内良一理事長から資金援助1億円が送金されたことが発表されたほか、「福祉と医療を切り離すべき」との方向性が改めて示された。福祉団体への法的規制が厳格化している今、「切り離さなければ援協は前に進めない。必要性を認識してもらわなければ」(毛利連副会長)という段階に来ているようだ。今後の援協のあり方が問われている。
毛利副会長によれば、以前は福祉、医療いずれかの分野で認定を得られれば、援協全体としての公益団体認定を取得できた。しかし09年の法改正により、認定機関が国家社会保障審議会(CNAS)から教育、保健、社会開発・飢餓対策省の各省に分かれたため、該当する省庁で認定を取得することになった。
そこで特に「足を引っ張る」のが福祉施設だという。援協の福祉施設は日系人を優先的に入居させているが、政府の方針は「人種を問わず地元の住民に対応しろ」というもの。そのため、認定に必要な各市の許可が困難になっている。スザノイペランジャホームに関しては、市と2年半も交渉しているが許可が下りていないという。「今年中に何とかしなければ認定に響く」という状況だ。
公益団体認定は過去にさかのぼって取得され、現段階では06〜09年分の認定はほぼ確定している。しかし、もしスザノの施設に不許可状態が続けば、今後、援協全体の認定を損なうことになりかねない。福祉と医療を切り離し、各施設が独立して認定を受ける方針に転換することで、日伯友好病院の認定を死守し、〃被害〃を最小限に抑えたい考えだ。
「福祉施設は『非営利団体』として生き抜く道もある。医療と福祉の切り離しはまだ案の段階だが、議論を重ねて年内には方針を決めたい」と毛利副会長は語った。
神内理事長からの送金1億円は、現在換金手続きが進められており、約半額は「神内プロジェクト」としてカンポスさくら、あけぼの、サントス厚生の3ホームの改修工事にあてられる。残金は同財団の要請により基金として積み立てられ、神内理事長の許可の下、必要に応じて事業に投資される。なお基金の管理は菊地会長を委員長、副会長らを委員とする「神内3施設維持管理基金委員会」(案)がになう。
今年のリッファに関しては、売上金が33万7470レアル、経費を除いた28万2750・19レが収入に計上され、福祉部およびPIPAや高齢者福祉施設の運営費にあてられる。
PIPAのホーム長・葉山武道さんが退任するにあたり、和嶋リカルドさんが後任の挨拶を行った。サンパウロ総合大学の心理学科を卒業後、英国でMBAを取得した。「薬を必要としないPIPAの取り組みは、治療の革新につながる。ブラジル全国の自閉症児のために、自分の知識と経験も役立てたい」と意気込みを語った。