ニッケイ新聞 2013年12月4日
「コンビの最後の願い」というほのぼの広告が30日付伯字紙に掲載された。56年間もフォルクスワーゲン(VW)が当地で生産し続けたワゴン車が「コンビ」だ。今月末に製造を中止するのにあたり、コンビ本人が愛顧15例に感謝する趣向の広告だ▼「コンビの中で誕生した赤子」「メーターに最長走行距離99万9999メートルを表示させた男」「コンビでイタリア居酒屋を始め、レストランとなった今もラビオリをコンビ型にしている店主」など、いかに生活に密着してきたかが伺える▼思えば邦字紙も、どれだけコンビで配達されたか。パステル、野菜しかり、日系フェイランテにも欠かせない存在だ。学校の送迎、生産物をセアザに運んだ農家も数えきれない▼エアーバック、ABSブレーキ装着が来年から法律で義務化されるのに伴い、それが不可能なために生産中止に追い込まれたが、今までに150万台も売り上げた。過去最多なのはやはり同社のフスカで、30年間に310万台を売った。本国で用なしになった旧式車の製造ラインを、丸ごと当地に移して生産を続けて利益を上げるのはVW社の得意技だ▼しかも9月に「最終版」を1200台限定生産し、商魂たくましく8万5千レアル(通常版5万)で売っている。トヨタのハイラックス新車が買えそうな値段だ。技術的投資をせずに販売し続けられたのは、早い時期に進出して保守的な大衆の心をしっかりと握ったからだ▼日本勢はもちろん韓国勢、中国勢も本腰を入れつつある今、〃前世紀の遺物〃の製造中止が意味するのは、当地でようやく本格的な自動車生産競争が始まったことに他ならない。(深)