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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年12月7日

 ブラジルの大豆生産が世界一になった。これまではアメリカが大豆大国だったのだが、「不毛の大地」とされていた乾燥地帯のセラードの開発に成功し「緑の大地」となりアメリカを抜いたのだから凄い。共同通信は、この大豆世界一の背景には、田中角栄首相が食糧輸入の多極化を推進し、セラード開発に尽力した功績が大きいと高く評価している。セラードは広大な面積を誇るが、酸性土壌であり、石灰投入による中性化が必要だし開発の初期にはサンパウロから石灰を運んだりもした▼確か80年代に入った頃、農水省事務次官から現在の国際協力機構の副総裁になった方がサンパウロを訪問したとき、この酸性土壌の話をすると、「農水省の100年を振り返ると、功績が一つだけある」とし、「日本の農地は酸性が多のだが、この土地改良に成功した」とし、セラードも心配する必要はないと語っていた。このために、日本は政府開発援助(ODA)を投入し、荒地を改良し大豆栽培を成功に導いたのを忘れてはなるまい▼日本とブラジルの政府が出資し、日伯セラード開発の会社を設立し、旧コチア産組がミナス州のサンゴタルドに若い組合員を入植させ開拓の先駆者となったのも懐かしい。これに続きコチア青年らも次々に挑み、日本の政治家・渡邊美智雄衆議(故人)も耕地まで購入するほどの気の入れようであった。土地の改良もだし灌漑用水の課題もあり失敗した人々もいる。だが—あの活気に満ちた人々の情熱が、乾燥の大地を緑に富む豊穣な地にした力を今さらながら讃えたい。(遯)