ニッケイ新聞 2013年12月13日
サンパウロ州高等裁判所は11日、サンパウロ市が14年から予定している都市不動産所有税(IPTU)の値上げを差し止める暫定令を出した。サンパウロ市側はこれを不服として最高裁に上告を行なうと見られるが、これで14年からの値上導入が難しくなってきた。12日付伯字紙が報じている。
サンパウロ州高等裁判所の特別機構は11日、25人の判事中22人が、サンパウロ市が14年に想定しているIPTUの値上げに反対であるという見解を出し、サンパウロ市に差し止めを求める暫定令を出した。
サンパウロ市はIPTUを、一般家屋20%、商用家屋35%を上限として値上げする法案を提出し、10月29日にサンパウロ市市議会で承認した。だが、かねてから市民に反対の声が上がっていた上、本来審議が行なわれる予定ではなかった午後11時39分に案を通過させたことが問題視されていた。このときの投票結果も29対26と接戦だった。
州検察局はこの法案通過を問題視し、11月5日にサンパウロ州第7地裁が差止め命令を出していたが、サンパウロ市側が高等裁に上告し、同月13日に差し止めが解かれていた。
今回の高等裁での審議は、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)と民主社会党(PSDB)による憲法違反直訴訴訟(Adins)を受けたもので、高等裁の判断は、この訴えに応えたものとなった。この2団体は法案承認のあり方を問題視していることに加え、値上げ幅が搾取的だとしている。2団体はインフレ率に従って6%ほどにするべきだとしている。
判事たちはサンパウロ州検察局が提出した資料から、14年のIPTUは8%程度の値上げが妥当との見解を示している。仮にサンパウロ市が判事たちの主張するように値上上限を8%に抑えた場合、徴収額は、市が当初見込んでいた12億レアルから4億レアルへと3分の1に激減することとなる。
この結果を受け、サンパウロ市は最高裁に訴える心積もりだが、サンパウロ市が市民に14年の正式な値上率を通達するためには、今月28日までに値上げ率を決めておかなければならない。最高裁で争うと、結論は14年に入ってからしか出ないため、10月に通過した法案通りにIPTUを上げるのはかなり困難になっている。
市政リーダーのアルセリーノ・タット氏(労働者党・PT)は高等裁の決定に対し、「IPTU値上げに反対するのは、値上げ対象地域に住んでいる人たちだ。現に判事や検察局員にイジエノポリスに住んでいる人たちがいるじゃないか」と反論した。だが、この判決で、仮に市議会でもう一度この法案に対する投票を行なったとしても反対票が上回ることが避けられなくなってきたことから、市は代案を考えざるをえない状況になってきている。
なお、Fiespのパウロ・スカッフィ会長(民主運動党・PMDB)は14年のサンパウロ州知事選立候補が有力視されている人物だ。PMDBの市議会議員はIPTU値上げ法案に賛成しているが、「私は自分の意思で動いた」と語っている。